コールセンターの業務は多岐に渡ります。
インバウンドとアウトバウンドでも違いはありますし、扱っている商品やサービスによっても違いが出てきます。
しかし、どのようなコールセンターであっても必ず行わなければならないことがあります。
それが「新人研修」です。
「新人研修をきちんと行えるかどうかで後の運営がうまくいくかどうか決まる」といっても過言ではありません。
そこで今回は、新人研修を成功させるコツや新人オペレーターへの教え方について解説していきます。
コールセンターにおける研修の役割とは?
そもそもコールセンターで実施される研修には、どのような意味が込められているのでしょうか?
研修といっても既存のオペレーターを対象としたもの、管理者を対象としたものなど様々です。 しかしながら、新人研修とそれら既存メンバーにおこなう研修では毛色が異なってきます。
新人研修で大切とされる項目は、主に以下の4つに分類されます。
①業務研修
②品質研修
③実践研修
④システム研修
それぞれについてご説明します。
①業務研修
業務研修とは、取り扱っている商品やサービス内容を理解するための研修を指します。
例として、携帯電話のサポートデスクをもとに考えてみましょう。
携帯電話のサポートデスクであれば、端末の性能やお得な商品、割引サービスなど自社製品について基本的な知識の取得が必要不可欠になります。
そのため「座学」を中心に、専門的な知識を取得することが目的となる研修です。
②品質研修
品質研修とは、敬語の使い方や基本的なビジネスマナーを学ぶことを目的とした研修です。
コールセンター業務において必要な言葉づかいや、言葉の選び方、話の聞き取り方を身につけます。
つたない言葉づかいをするとお客様を激怒させてしまう可能性があるため、適切な回答や応答ができるようにトレーニングをします。
対応品質が高い先輩オペレーターの音源を「モニタリング」するなどして実施されることが多い研修です。
③実践研修
実践研修とは、管理者や先輩オペレーターと一緒におこなう「ロールプレイング」と、実際のお客様対応をする「OJT(On the Job Training)」が含まれます。
さきにあげた「業務研修」と「品質研修」のつぎのステップにあたるもので、最低限の知識と業務内容の理解が必要になります。
④システム研修
コールセンター業務で使用されるシステムはたくさんあります。
自社専用ソフト、officeソフトなど、みなさんも普段勤務している企業で利用されているかと思います。
電話機の取り扱い、折衝登録など多くのシステムを利用しなくてはいけないので、新人さんは覚えるまでが大変です。
そこにプラスしてブラインドタッチの技術も含まれます。
システム研修は①~③までの研修と並行して行われるのが一般的です。
その他にも、会社概要やコンプライアンスについての研修があります。
また、オペレーターとして入社した場合と、管理者として入社した場合では実施される研修の内容や濃さに違いが出ます。
管理者の新人研修だと、ハラスメントやマネジメントに関する項目が追加されることが多いです。
新人研修の一般的な流れ
新人研修の一般的な流れは以下の通りです。
新人研修の流れは図に表した通り、座学⇒モニタリング⇒ロールプレイング⇒OJT⇒デビューの順となります。
おそらくほとんどの企業でこの流れを採用しているのではないでしょうか?
各段階における研修期間は業務内容や事業所によって異なりますが、一般的には1週間~2週間程度で一連の流れが終了することになります。
しかし、高度な専門知識が必要となるテクニカル系の業務だと、長いところで1か月ほどの時間をかけて研修を実施することもあります。
新人研修の難しさとその現状
新人研修は既存のオペレーターに対して実施する研修とは違った難しさがあります。 こちらでは、新人研修が難しいと言われている理由を考えみましょう。
①十分な時間や研修担当者を確保できない
新人研修には既存オペレーター研修と異なり、相当の時間を要します。 そのため、時間や人員を確保するのが難しく、研修期間を短縮しなくてはならない事態に陥ることがあります。 とくに繁忙期と新人研修が重なると、研修担当となる現場の管理者が手を離せない状況になりやすく、研修が途切れてしまうこともざらです。
新人の受け入れと繁忙期が重ならないように対応できたらよいのですが、それが難しい場合は「研修担当の管理者を完全に現場から外す」など、シフトの調整が必須となるでしょう。
②研修の途中で退職してしまうリスクが高い
他業種でもあることですが、コールセンターで最も多いのがこの研修中に退職してしまうパターンです。
退職理由は人によりさまざまですが、研修の内容が不十分、担当者の説明が分かりづらいなど、研修内容そのものが原因になることもあります。
そのため、新人研修をおこなう際は研修担当者のスキルも重要な要素となってきます。
新人研修のコツと押させておきたい重要ポイント
新人研修の一般的な流れは以下になるとご説明しました。
座学⇒モニタリング⇒ロールプレイング⇒OJT⇒デビュー
こちらでは、独り立ちを意味する「デビュー」を除く新人研修の一般的な流れをもとに、各段階におけるコツと重要となるポイントを解説していきます。
(座学編)
座学で最も大切になるのが「マニュアル」です。
マニュアルには紙媒体とパソコン上のものがありますが、共通して気を付けるべき点が鮮度です。
「マニュアルの鮮度ってなんだ?」といわれてしまいそうですが、言い換えると「最新の情報が掲載されている」ということです。
新しい商品やサービスのリリース、既存商品の生産終了など、日々新しい情報が入ってきます。
しかしながら、業務に追われるばかりにマニュアルの更新がおろそかになっている事業所がとても多いです。
マニュアルの内容が最新になっていないと、研修を受ける側はとても不安な気持ちになります。
マニュアル作成を毎日行うことはできませんので、重要な変更点はメモをしておくなど、すぐに修正ができるよう常にアンテナを張っておきましょう。
(モニタリング編)
モニタリングの目的は、「先輩オペレーターの対応方法やシステムの使い方を学ぶこと」にあります。 先輩オペレーターの隣に新人を着席させて研修を実施したいところですが、コロナウイルスの影響で一部のコールセンターはリモートで対応できるような体制へシフトしつつあります。
リモートでもモニタリング機能のあるシステムを活用すれば、モニタリングを実施できます。
先輩の顧客対応をリアルタイムで聞くことで、会話のペース間や言葉使い、難しい問い合わせへの対処方法などを学びます。
(ロールプレイング編)
ロールプレイングの際に重要なポイントは、「お客様の氏名や連絡先など基本的は聴き取りができているか」、「問い合わせ内容を正確に理解できているか」の2つです。
お客様情報を正確に聴き取りできなければ、別顧客の情報を誤って開いてしまう可能性もあり、顧客情報の流出事故となる可能性があります。
また、問い合わせ内容を正確に理解できていないとお客様の求める回答ができず、最悪の場合クレームに発展します。
ロールプレイングを担当する管理者や先輩オペレーターは、言葉づかいや回答方法の前に、上記2つのポイントがしっかりできているかを注視しましょう。
(OJT編)
OJTはいよいよ本物のお客様対応を行います。
通常であれば先輩オペレーターが横についてモニタリングをしながら研修を実施しますが、可能であれば最初のOJTは管理者が横付けで対応しましょう。
とくにインバウンド業務においては、最初のOJTで管理者が横にいることがとても重要な意味を持ちます。
アウトバウンド業務の場合は簡単な架電対応から始められるので、管理者以外の先輩オペレーターが横付けで研修をおこなってもおおむね問題はありません。
しかし、インバウンドはクレームが突然入ってくることもありますので、初回は管理者が横について研修をしてください。
管理者が横で聴いてくれているという安心感があり、新人さんの気持ちはだいぶ落ち着きます。
おわりに
新人研修におけるコツやポイントをいくつかご紹介しましたが、今回紹介したことがすべて正解というわけではありません。
なぜなら、みなさんが働いているセンターや事業内容によって、研修方法やカリキュラムが異なるからです。
自分の勤務している事業所の新人研修に足りないものは何なのかを考え、研修担当だけなく研修を受ける新人さん達にも意見を求めるようにしてください。
何度も手直しをするのは大変ですが、その積み重ねがよりよい新人研修の基盤となってくれるはずです。