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コロナ禍におけるコールセンターの現状と課題

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現在、新型コロナウイルスが猛威を振るっており、さまざまな業界で影響が出てきています。 例えば、外食業界の大手企業が大幅な店舗閉鎖を実施したり、個人経営の病院が破産するなど、私たちの生活に大きな影響が生じています。

私が勤めているコールセンターも例外ではありません。 そこで今回は、新型コロナウイルスがコールセンター業務へ与えた影響について解説します。

新型コロナウイルスがコールセンター業務に与えた影響

新型コロナウイルスの影響により、コールセンター業界はこれまで以上に厳しい局面に立たされています。

こちらでは、新型コロナウイルスが与えた影響の代表的な例を見ていきます。

座席数の制限や最小限の人員での対応

新型コロナウイルス感染防止の観点から、これまでのような、ぎゅうぎゅうに座席を詰めた状態での業務を行うことができなくなりました。

そのため、「座席数を制限し、出勤人数を最小限に抑える」という措置を採る企業が増加しています。

しかし、この措置には問題点があります。出勤人数を最小限に抑えるということは、対応可能なオペレーターの数が減るということになるため、応答率や成約率など、KPIの悪化につながっていきます。

営業時間の短縮

人員を最小限に抑えた運営を行っている企業が多いことから、時間帯ごとの適正な人員配置が困難となっており、営業時間の短縮を余儀なくされている事業所も珍しくありません。

シフト調整により対処も可能ですが、すべてのオペレーターが対応できるわけではないため、どうしても穴の空いてしまう時間帯が発生してしまいます。

ヘッドセットなど業務に利用する機材の個人管理を徹底

企業によって異なりますが、コロナウイルスの感染拡大前は、席にヘッドセットを設置し、それをオペレーターが使いまわしで利用するという運用を行っている事業所も存在していました。

しかし、現在はコロナウイルス対策の一環として、ヘッドセットなどの機材を個人で管理させる運用に変更する企業が増加しています。

感染防止の観点から考えると、感染が発覚した場合でも、他人に感染させるリスクを低くすることができる、というメリットがあります。

ですが、個人管理になると、発注予定数の把握が難しくなる、廃棄予定の機材と混在してしまう可能性があるなど、細かいところでの問題も発生しやすくなります。

企業のコロナウイルス対策 一例

コールセンターを運営している企業はどのようなコロナウイルス対策を講じているのでしょうか?

37.5℃以上の熱がある場合や、体調が優れないときの連絡フローは、おおよそこのようになっているのではないでしょうか。

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図のように基本的な対策フローを取り決めたうえで、具体的な感染防止対策を実施しているところが多いかと思います。

大多数の企業では、日本コールセンター協会が、5月頃に発表した指針に沿った対策を行っており、現在も継続して同じ防止策を継続しているところがほとんどです。 ※参考:(日本コールセンター協会「新型コロナウイルス感染症」に関する指針

以下、感染防止対策の一例を記載します。

・座席をひとつ飛ばしで配置 ・時差出勤の導入 ・業務室の入り口やお手洗いなどにアルコール消毒液の配置 ・各席にパーテーションパネルを設置 ・在宅勤務の導入 ・出勤前、または出勤直後の体温測定の徹底 ・空気清浄機の台数を増加

このような対策を各社講じていますが、コールセンターにおける感染を完全に封じ込めることはできておりません。

また、在宅勤務の導入について、「個人情報の取扱い」、「エスカレーション対応の難しさ」、「設備導入へのコスト」などから、実施している企業は多くありません。

現場の声(一例) 

企業は懸命にコロナウイルス対策を講じていますが、現場のスタッフからはまだまだ不十分だという声が多いです。

以下で「現場の声」の一例をご紹介します。

(1)会社のコロナウイルス感染防止策に対する不満

会社側の感染対策に不満を抱く現場のオペレーターが非常に多く、「席の間隔をあける」「定期的に換気を行う」という会社の方針が出ていても、いまだに十分な対応ができていない事業所もあります。

その理由として、コールセンターは雑音が入ることを懸念し、基本的には窓を開けて業務を行うことはできません。

また、パソコンなどの配置上、どうしても席の間隔をあけることができない事業所もあり、いまだに横並びで業務を行っているところもあります。

(2)身近な人に感染させてしまうのではないかという不安

コールセンターは気密性が高い環境での業務を求められる仕事です。

そのため、クラスター(集団感染)の発生リスクが高くなる傾向にあります。

一例として、沖縄県の沖縄市にあるコールセンターにおいて、複数名の感染者が確認されるクラスターが発生しました。 ※参考(7/28付沖縄タイムスより)

このような実例が出てしまっているため、現場のオペレーターは、「身近な人達に感染させてしまうのではないか…」という恐怖感を抱いているのです。

(3)クレームの頻度が増加

コロナ対策の一環で「最小限の人数で対応」を行っている事業所が多いため、電話しても繋がりにくい状況が続いています。

そのため、「長時間待たされた」「何度も掛け直した」など、お客様側の手間が増えてしまっており、そのことに対するクレームが急増しているのです。

対応をする現場のオペレーター達からは、「なぜ怒られなくてはいけないのか」と憤りの声が出ています。

コールセンター運営企業の支援策 一例 

企業ごとに違いはあるものの、各社コロナウイルス関連の特別手当の創出や、休養に関する特別な措置を講じはじめています。

こちらでは、それらの施策からいくつか例をあげて紹介します。

特別慰労金の支給

ステイホームが広まり、あまり外出をしなくなったことから、通信販売の依頼が増加しています。

その影響により、業務量が急増した通信販売の問い合わせ窓口担当者へ、特別慰労金を給付する企業も出てきました。

しかし、一時的なもの・期間を定めたものであることが多く、すでに支給を終了している企業もあります。

コロナ関連休業を査定対象から除外

コロナウイルスの感染が疑われる、または感染防止の観点からの自主的な休業に対して、査定の対象から除外する企業もあります。

昇給やボーナスへの影響がなくなるため、従業員からの評判は上々であり、企業としても従業員確保の観点から、現在でも継続して行っている企業が多いです。

今後の課題

今後コールセンター業界は、コロナウイルスの拡大によって、益々厳しい状況になることが予想されます。

では、これからコールセンター業界はどのような対応を講じていく必要があるのでしょうか?

重要なポイントを以下で3つご紹介します。

①テレワーク実施の推進

企業によってはすでに開始しているところもありますが、まだまだ業界全体としては浸透していません。

その理由として、コールセンターのテレワーク化には、下記のような問題点があるためです。

-個人情報の取扱い

コールセンターでは、多くのお客様情報(個人情報)を利用して業務を行っています。 そのため、情報漏洩の可能性などを考えると、テレワークの導入を躊躇してしまう企業も多いのです。

-コスト面

テレワークを推進するためには、その分の初期投資が必要不可欠となります。 専用の機材購入やシステムの構築などを行うと、莫大な費用がかかってしまうため、簡単には導入ができないのです。

しかし、雇用の確保や従業員の健康などを考慮すると、今後テレワークの導入は必要不可欠となってくると予想されます。

②衛生管理の徹底

アルコール消毒液の配置や空気清浄機の台数を増やすなど、基本的な対応は行っているところがほとんどですが、それだけではまだ不十分です。

業務室、休憩室のドアノブなど、共有で利用する箇所を定期的に消毒する。 ※可能であれば、「2時間に1回消毒する」など、ルールを設けるほうがよい。

業務終了後は、利用したパソコンのキーボード、着席した椅子や机、自らのヘッドセットに至るまで、ウエットティッシュを用いてふき取りをするよう、事業所内で徹底する必要があります。

企業によって運用が異なることがありますが、最低限できる衛生管理をこれまでよりも丁寧に行っていくことが大切になります。

③不安を解消するための仕組づくり

「現場の声(一例)」のところで触れましたが、現場のオペレーター達は、感染の恐怖と戦いながら業務に励んでいます。

企業に求められるのは、「オペレーターの不安を共有し、一緒に解決策を考える姿勢」です。

現場の声が反映されない企業に、従業員はついてきません。

優秀な人材の流出を抑え、安定的な運用を行っていくためには、オペレーターの不安を解消するための仕組みを考え、実際に活用できる形にしていくことが重要です。

おわりに 

現在、第二波が来ているとされるコロナウイルス。

これから益々コールセンター業界を取り巻く環境は変化していくと思われます。

そのとき、企業はどうやって従業員を守り業務運営をしていくのか、今後も難しい舵取りが迫れることになりそうです。