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コールセンターで「大量採用して、デキル人だけ残す」採用方法のデメリット

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コールセンターは人手不足の代表的な職種ですから、人材募集する企業は多いでしょう。なかには採用や教育の手間を省きたいあまり、「とりあえず大量採用して、自然淘汰に任せる」などと考えているコールセンターもあるかもしれません。

このような考え方は道義的な面のみならずさまざまなデメリットがあるため、業績改善に寄与できる方法ではありません。本記事では離職率が高くなる理由も含め、4つのデメリットを取り上げ解説していきます。

コールセンターは常時採用が必要となる場合が多い

コールセンターは人手不足であり、常時採用が必要となる場合が多いです。本記事でははじめに、大量採用する背景について考えていきます。

離職率が高いため、人を求める職場が多い

コールセンターの離職率については、リックテレコム「コールセンター白書2018」で公表されています。以下の通り、離職率が高いコールセンターは少なくありません。

全コールセンターに対する割合
離職率が30%を超えるコールセンター 37.9%
離職率が50%を超えるコールセンター 14.2%

引用:月間コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2018. リックテレコム, 東京, 2018, p50.


採用後1年以内のオペレータに限った調査を見ると、離職率が高いコールセンターはさらに多くなります。

全コールセンターに対する割合
離職率が30%を超えるコールセンター 55.6%
離職率が50%を超えるコールセンター 40.5%

引用:月間コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2018. リックテレコム, 東京, 2018, pp.50-51.


厚生労働省「平成 30 年雇用動向調査結果の概況」によると、全業種の離職率は14.6%となっています。これと比べてもコールセンターの離職率は際立って高く、特に採用後1年以内のオペレータをどう定着させるかが課題です。とりわけ入社して1年以内に半分以上が離職するコールセンターが4割を超えることは、なんとかしなければならない状況といえるでしょう。

一方でどれだけ離職率が高くても、コールセンターに求められる機能は変わらないため、人員不足に悩むこととなります。このようなコールセンターでは、常に採用を行わなければなりません。

採用方針は主に2通り。しっかり選考するか、採用してデキル人だけ残すか

人員不足が慢性化しているコールセンターにおいて、採用方針は大きく以下の2通りに分けられます。

採用方法 採用数 離職率
あらかじめしっかり選考する ある程度絞られる 低いことが多い
とりあえず採用して、デキル人だけ残す 大量採用 高い

採用には手間も時間もかかります。このため、最小のコストと労力で最大の効果を得たいなら、あらかじめしっかり選考することが望ましいわけです。

しかし実際には、とりあえず大量採用してデキル人だけ残すコールセンターも少なくありません。本記事ではなぜこの方法を取るのか、その思惑とデメリットについて考察していきます。

「大量採用して、デキル人だけ残す」採用方法の理由

大量採用してデキル人だけ残すコールセンターには、2つの理由があると考えられます。それぞれについて、解説していきましょう。

せっかく手間暇かけても、すぐ辞められるのでは無駄に感じる

今は大量採用、大量離職するコールセンターでも、はじめからそうではなかったのかもしれません。しかし一生懸命に教育しても、大部分が1年で離職してしまうような状況では、新人へ行う教育のほとんどは無駄となってしまいます。

本来このケースでは離職を防ぐための原因を追究し、採用や教育の手法を工夫すべきものです。しかし頑張っても結果が出なければ、逆に採用や教育の手間を最小限にしても不思議ではありません。このようなコールセンターでは「とりあえず採用して、戦力になる人だけ残す」という手法を取る可能性も考えられます。

採用にも教育にもお金や手間をかけたくない

もう1つの理由として、そもそも「採用にも教育にもお金をかけたくない」というものが考えられます。「コールセンター白書2018」によると、以下の結果が出ています。

対処した項目 該当する割合
採用基準を下げた 18.9%
研修など人材教育プログラムを充実 59.4%
業務に対する評価とフィードバックを強化 47.4%
キャリア支援制度を設置、または強化 40.5%

引用:月間コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2018. リックテレコム, 東京, 2018, pp.50-51.


全体の2割弱のコールセンターで、採用基準を下げたという回答が寄せられています。これは仕事に就きやすくなる点で応募者にはメリットのある内容ですから、一概に悪いとは言えません。むしろその後の教育制度がしっかりしていれば、ありがたい方針ともいえるでしょう。

しかし教育制度の充実をせず、頭数をそろえる目的で採用基準を下げても、あまり意味はありません。大量採用しても多くの方が離職してしまい、いつまでも採用活動を続けることになってしまいます。

一方で研修や評価、キャリア支援制度に力を入れる職場は4割~6割程度にとどまっています。採用後1年以内の離職率が高いコールセンターが6割弱に達していることを考えると、これらの制度を強化するコールセンターも6割前後、またはそれ以上であるべきはずです。しかし実際には、そうなっているとは言えません。

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これらのデータは、 「離職率が高い状況に対して、有効な対策を検討していない」コールセンターの存在を示唆しています。このような職場が人員を確保するなら、とにかく採用するしかありません。さまざまなメディアでも報じられている通り、「大量採用して、デキル人だけ残す」コールセンターも、なかにはあると考えられます。

大量採用し離職率が高いコールセンターのデメリット

大量採用し離職率が高いコールセンターには、教育をしなくても優秀な人員が残ります。この点はメリットに思われるかもしれませんが、実際にはさまざまなデメリットがあるものです。本記事では4点のデメリットを取り上げ、解説していきます。

優秀な人材を社内に確保しにくい

教育をしなくてもひとりでに育つ人材は、どの業界でもそれほど多いわけではありません。加えてこのような人材は、貴社だけでなくどのコールセンターでも活躍できるものです。結果として各社で取り合いとなりますから、少しでもよい待遇を提示する企業があれば簡単に転職されるデメリットは見逃せません。

従って人手不足を解消するポイントは、どれだけ多くの方を優秀な人材に育て上げられるかにかかっているといえるでしょう。優れたノウハウがあれば伸びしろのある方を見極め育成すればよいわけですから、即戦力になる優秀な人材の獲得競争に乗り出す必要はありません。充実した育成とサポートにより定着率が高まれば、自然と優秀な人材を社内に確保できます。

逆に「とにかく優秀な人材を」とばかり考え、教育を惜しむコールセンターは、定着率の低下に悩むこととなります。不足分を埋めた結果、経験の少ないオペレータばかりになれば、クレームの増加にもつながりかねません。

ノウハウを社内に蓄積・継承しにくい

教育されなくてもひとりでに育った方ばかりの職場では、会社から「なにか教育してもらった」という意識や、帰属意識が低い方が多いものです。このような職場では、知識をシェアすることにも消極的になる可能性があります。これが高じると「離任後のことは知らない」「自分の仕事について、他の人に教える必要はない」など、自己中心的な人材ばかりとなる恐れもあります。

結果としてノウハウを会社に残さないまま離職してしまい、いつまでたっても組織知が蓄積されません。職場全体のレベルアップを阻む点は、組織にとって大きなデメリットといえるでしょう。

短期間とはいえ、離職者に支払う人件費は無視できない

大量採用、大量離職する企業において、離職者に支払う人件費は無視できません。

「コールセンター白書2018」によると、オペレータの時給は全国平均で1,489円となっています。1日8時間、1ヶ月22日勤務と仮定すると、1人当たりの給与は月額262,000円余りとなり、少額とはいえません。たとえば10人採用して半年後に8人辞めた場合は、およそ1,258万円の人件費が無駄になってしまいます。

このお金を使ってより定着率の高い施策を取り、ポテンシャルのある方を1人でも多く採用できたほうが有意義なことは、言うまでもありません。「大量採用して、デキル人だけ残す」方法は会社の資産を無駄に垂れ流す行為ともいえます。したがって、財務面でも有効な方法とは到底言えません。

ブラック企業として批判を受ける恐れがある

いまやインターネットを使って、誰でも情報発信ができる時代です。「とりあえず採用して、できない人は罵詈雑言や難癖をつけて辞めさせる」「職場の辛さに耐えられる人だけ残す」といった方針で進めていると、職場の悪評がインターネットで公表される恐れがあります。

いったんついた悪評は、簡単には消えません。特に良い環境を求める方ほどこのような職場を避ける傾向がありますから、ますます採用がしにくくなり事業運営が困難となりかねません。

競争を勝ち抜くためには採用をしっかり行い、「普通の人を優秀な人材に育てる」ノウハウを持つことがカギ

ここまで述べた通り、「大量採用して、デキル人だけ残す」採用方法は効率的なようでいて、そうではありません。

  • 優秀な方は獲得が難しく、入社しても簡単に他社へ転職される
  • 優秀でない方は、入社後短期間で離職する

そのため費用ばかりかかる割には、いつまでたっても人手不足が解消しないどころか、貴社の評判も悪くなるばかりという事態に陥る恐れがあります。このようなことが続けば、事業の継続自体も難しくなりかねません。

競争を勝ち抜くためには、人材の確保が重要です。そのためには採用や教育をしっかり行い、「普通の人を優秀な人材に育てる」ノウハウを持つことがカギとなります。


参考: 月間コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2018. リックテレコム, 東京, 2018, pp.48-54.
厚生労働省「平成 30 年雇用動向調査結果の概況」:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「コールセンター職場が示すものとは?」:https://www.jil.go.jp/column/bn/colum0129.html

リックテレコム「早期離職を防ぐ「最初の90日」の乗り越え方」:https://callcenter-japan.com/magazine/3838.html
さつきソリューション「VOL.9 コールセンターの離職率の考察 <その1>」:https://satsuki-sol.com/blog_articles/rishokuritsukaizen6.html
さつきソリューション「VOL.11 コールセンターの離職率の考察 <その3>」:https://satsuki-sol.com/blog_articles/rishokuritsukaizen8.html
OKIソフトウェア「コールセンター運営のポイント 第82回:ミスマッチを防止し、コールセンターの離職率を減らす8つの対策」:https://www.oki-osk.jp/product/crm/column/2019/c82.html

リロクラブ「離職防止のための対策と、定着率を上げる具体的な5つの取り組み」:https://www.reloclub.jp/relotimes/article/12014
幻冬舎ゴールドオンライン「増える人手不足倒産…「社員を軽視している会社」の断末魔」:https://gentosha-go.com/articles/-/23138
朝日新聞出版「コールセンターがハラスメント天国な理由」:https://dot.asahi.com/wa/2019082800102.html?page=1
扶桑社「コールセンターは“女のブラック職場”!? 元従業員の告白」:https://nikkan-spa.jp/1535413