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コールセンターの24時間化は必要?検討すべきポイントを解説

顧客にとって、24時間いつでもコールセンターに連絡できる体制はありがたいものです。一方で運営する側に目を移すと、コストや人材確保などさまざまな課題があります。このため、24時間対応の実現には慎重な判断が必要です。
本記事ではコールセンターの24時間化について、検討すべきポイントを解説します。

コールセンターの24時間化は一定の需要がある

コールセンターの24時間化には一定の需要があり、実際に24時間対応を行っているセンターも一定数あります。リックテレコム「コールセンター白書2019」によると、一般消費者がコールセンターに最も求めることとして「24時間対応」を挙げた方は全体の9.5%にのぼり、主要な要望の1つとなっています。

また、リックテレコムの調査によると、24時間対応を行っているコールセンターは全体の10~20%にのぼり、少ないとはいえません。

割合
2017年 13%
2018年 20%
2019年 12%

引用:月刊コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2019. リックテレコム, 東京, 2019, p38
リックテレコム: 基礎データとチャネル活用“チャット”採用企業が急増!問われる顧客接点の「オムニ化」度合い. コールセンタージャパン平成30年10月号: 18-22, 2018.

このことはコールセンターにとって、24時間対応を要する業務が含まれる可能性があることを意味します。その多くは「いつかかってくるかわからない上に、至急の対応が必要」という特徴があります。代表的な業務として、以下の例があげられます。

  • キャッシュカードやクレジットカード、スマートフォンの紛失・盗難
  • 消防/救急、および警備の出動依頼
  • ロードサービス

これらは生活する上で必須の業務ですから、今後も24時間対応について一定の需要はあるといえるでしょう。

コールセンターの24時間化には課題もある

冒頭で解説したとおり、コールセンターの24時間化には課題があります。ここでは主な2つの課題を取り上げ、解説していきます。

そもそも24時間体制はコストがかかる

コールセンターを24時間体制にすると、それだけ人件費がかかります。たとえば昼夜同じ席数で運営した場合は、8時間オープンした場合と比べて3倍。21時から翌朝9時までの人数を3分の1に抑えたとしても、トータルで2倍の人件費がかかります。

加えて22時から翌朝5時までの時間帯は、所定時間内であっても25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。22時~翌朝5時と10時~17時は同じ7時間ですが、人件費は深夜勤務のほうが25%増えるというわけです。必然的に利益が圧迫されることになるでしょう。

人手不足も課題。深夜の時間帯に人を配置すると、日中時間帯の体制が薄くなる

新型コロナウイルスの影響により、有効求人倍率は低下傾向にあります。しかし、これが応募者の増加を生み、コールセンターの人手不足を解消するかどうかは別の話です。これまで人手不足、かつ採用難の状況が続いていたわけですから、限られた人員で効果的に業務を遂行しなければなりません。

特に深夜の時間帯に人員を配置すると、そのぶん日中時間帯の体制が薄くなります。「深夜も日中も両方採用すればよい」と言うのは簡単ですが、現実はそううまくはいきません。双方はトレードオフの関係にありますから、24時間対応の実施にはこの点をよく検討する必要があります。

特にピーク時の応答率が80%を切る時間帯があるセンターでは、24時間対応よりもピーク時の増員を優先しないと顧客満足度の低下につながる恐れがあります。

コールセンターの24時間化は必要か?検討すべき5つのポイント

コールセンターの24時間化を行う際には、事前の十分な検討が必要です。ここでは5つのポイントを取り上げ、考慮すべき点を解説します。

ポイント1:24時間対応が必要な業務か

コールセンターの24時間化を考える際には、「その業務で本当に24時間対応が必要か」を考えることが重要です。顧客の利便性向上だけの視点で、安易に突き進んではいけません。以下の点は、考慮すべきポイントといえるでしょう。

  • 翌朝になると手遅れになってしまうのか?
  • 受付時間を夜間帯に延長する方法や、土休日の対応でニーズを満たせないか?
  • 受付フォームを設置し、受付だけ24時間対応という方法で対処できないか?

これらを考慮しても、なお24時間対応が必要な場合はあります。その場合は対応する業務を絞った上で、必要な体制を整えましょう。

業務によっては、夕方から夜間に架電が多くなる場合もあります。その場合は、受付時間帯を夜間帯にシフトすることも対応策の1つです。一例として「はりまいのちの電話」では、受付時間を14時~1時に設定しています。

ポイント2:架電してくる方は、24時間対応を求めているか

架電してくる方は24時間対応を求めているかという点も、検討にあたり重要なポイントとなります。「コールセンター白書2019」によると、コールセンターに電話をかけたことがある方のほとんどが40代以上となっています。

属性 40代以上の割合
日本の総人口 61.6%
コールセンターに問い合わせた方 88.6%

参考:総務省統計局「人口推計-2019年(令和元年)5月報-」, 月刊コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2019. リックテレコム, 東京, 2019, p100.

40代以上の方は若い世代と比べて、深夜の活動意欲を持つ方が少ない傾向にあります。そのため深夜も対応できる体制を整えたものの、さっぱり電話が鳴らないといったことも考えられます。商材や提供するサービスにもよりますが、特段の事情がない限り24時間化に応えることは慎重な判断が求められます。

ポイント3:他の方法で代替できないか

24時間対応が必要、または要望がある業務であっても、必ずしも電話対応を要するとは限りません。問い合わせする方は、疑問や問題が解決できれば方法は問わない場合も多いものです。以下の方法で代替できないか、検討してみてください。

  • 自動応答サービス
  • WebサイトにFAQ(よくある質問)を掲載する
  • チャットボットを活用する

これらの方法は、コールセンターが無人でも対応可能な点が特徴です。オペレーター不足と人件費の課題を解決する点でも、有効な方法といえます。

関連記事:カスタマーサポート窓口を開設する際に必要となるFAQの項目とは - CallCenter Times(コールセンタータイムズ)

ポイント4:オペレーターの採用や、管理者の配置は可能か

深夜の業務は昼夜逆転となるため、敬遠する方も少なくありません。このため24時間対応の実施にあたっては、本当に従業員を割り当てられるのか慎重な判断が必要です。

特に都市部では、公共交通機関で通勤する方も多いです。「始業時間よりもかなり早く出社しなければならない」「仕事は終わったけれど、始発まで待たなければならない」ということがあると、職場への不満につながります。あらかじめ運行時間帯を調査の上、始業・終業の時間帯を決めることが欠かせません。

また、時間帯ごとの管理者を配置することも重要なポイントです。管理者の職務を遂行できる方の数は限られますから、長時間労働にならない配慮も求められます。

ポイント5:費用対効果に見合うか

費用対効果という点も、24時間化の可否を決める重要なポイントです。日中や夜はひっきりなしに電話がかかってきても、深夜になると呼数が大きく減少するといった場合は、24時間体制をやめることで利益を増やせる可能性があります。この場合は深夜にコールセンターを閉めて、忙しい時間帯の体制強化にあてる方法も1つの解決策です。

判断する指標の一例として、稼働率があげられます。体制を最小限にしても稼働率が70%を切ることは、1つの判断材料となるでしょう。

コールセンターの24時間化にはさまざまな困難がある。できるだけ避ける工夫を取ることがおすすめ

ここまで解説した通り、コールセンターの24時間化にはコストや人材確保など、さまざまな困難があります。一方で24時間対応を実現したとしても、多くの業務では深夜の時間帯に、日中と同じ呼数があるとは限りません。

もっとも緊急性の高い業務は、24時間対応が求められます。しかし、それ以外の業務については、24時間対応に回す人員をピーク時の増強にあてるほうが、顧客満足度の向上を図れます。このため、安易に24時間の有人対応を選択せず、できるだけ他の方法を取ることがおすすめです。

参考:
月刊コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2019. リックテレコム, 東京, 2019, pp.38,100.
リックテレコム: 基礎データとチャネル活用“チャット”採用企業が急増!問われる顧客接点の「オムニ化」度合い. コールセンタージャパン平成30年10月号: 18-22, 2018.

厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei07.html#:~:text=%E4%BC%91%E6%97%A5%E5%8A%B4%E5%83%8D%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E5%89%B2%E5%A2%97%E8%B3%83%E9%87%91,%EF%BC%95%E5%88%86%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E3%80%81%E6%B3%95%E5%AE%9A%E4%BC%91%E6%97%A5%E3%81%AB%E3%81%AF,%E8%B3%83%E9%87%91%E3%81%AF%E7%99%BA%E7%94%9F%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
リードプラス「有人24時間対応のコンタクトセンターは時代遅れ?最新テクノロジーを活用する方法」:https://www.cloud-contactcenter.jp/blog/utilizing-the-latest-technology.html
KDDIエボルバ「コールセンターの夜勤ってどんな感じ?仕事内容と夜に働く6つのメリット!」:https://www.evojob.com/column/124
日本いのちの電話連盟「全国のいのちの電話 ご案内」:https://www.inochinodenwa.org/lifeline.php
はりまいのちの電話:https://harima-inochi.jp/

総務省統計局「人口推計-2019年(令和元年)5月報-」:https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201905.pdf
リクルートライフスタイル「飲食店の深夜営業の利用実態と深夜営業への考えを調査」:https://www.recruit-lifestyle.co.jp/news/pressrelease/gourmet/nw28764_20191121
リックテレコム「KPIで現状把握しよう」:https://callcenter-japan.com/campus/3277.html