あなたの会社のコールセンターでは、短時間勤務(時短勤務)制度は導入されているでしょうか。短時間勤務はオペレーター側だけでなく、運営側にとっても多くのメリットをもたらす方法です。特にオペレーターの採用が難しい時代では、コストを抑えつつ人員確保ができる切り札ともなり得ます。
本記事では、コールセンターが短時間勤務に対応するメリットを解説します。
短時間勤務への対応が求められる理由
はじめにコールセンターが短時間勤務への対応が求められる理由を、大きく2つの観点に分けて解説します。
就業者の確保が必要。オペレーターは採用が難しい一方で、離職者が多い。
オペレーターは人手不足の代表的な職種です。「コールセンター白書2019」によると、なかなか採用できない拠点を持つ運営会社は全体の7割を超えています。このように多くのコールセンターでは、採用が難しい現状を抱えています。
一方で離職者が多いことも、コールセンターの特徴に挙げられます。1年間で3割の方が離職する職場も、珍しくありません。特に入社後1年以内の方は、経験者よりも離職につながりやすい傾向があります。
採用が進まない上にどんどん離職されたのでは、コールセンターの機能を果たせません。このため多くの会社では、離職を防ぐ対策を取っています。なかでも「短時間勤務などシフトに柔軟性を持たせた。」と回答したコールセンターは、2018年から2019年にかけて増加しています。
年 | 柔軟性のあるシフトを実施 | 柔軟性のあるシフトを実施予定 |
---|---|---|
2018年 | 23.3% | 12.0% |
2019年 | 29.1% | 10.0% |
引用:月刊コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2019. リックテレコム, 東京, 2019, pp.55-56
このように短時間勤務への対応は、就業者を確保する上で重要な対策の1つとなっています。
時間帯や曜日によって異なる入電数に対し、フレキシブルに対応する。
コールセンターは1日や週のなかで、入電数が上下することが特徴です。どの曜日のどの時間帯が多くなるかは、扱う商材や顧客の特性、年齢層などにより異なりますから、一概には言えません。
コールセンター運営においては、時間帯により異なる入電数に対してフレキシブルに対応しつつ、コストの抑制も求められます。このことも、短時間勤務への対応が求められる理由の1つです。
コールセンターが短時間勤務に対応するメリット
コールセンターが短時間勤務を希望する方を採用することには、多くのメリットがあります。ここでは4つの観点から、どのようなメリットがあるか解説していきます。
1. 入電の量にあわせて人員を調整でき、応答率と稼働率を適正に保ちやすい。
短時間勤務の採用により、入電が多い時間帯に合わせ、ピンポイントで体制を強化することが可能となります。例えば昼休みの入電が多いコールセンターならば、その時間帯に勤務できる方を採用する方法が考えられます。
このメリットは、フルタイムのオペレーターばかりのコールセンターではなかなか得にくいものです。入電が多い午前中に人員を多く配置すると、午後の人員も多くなりがちです。この結果、どうしても稼働率の低い時間帯が発生してしまいます。
ピークの時間帯に合わせて短時間勤務の方を採用することにより、適正な応答率や平均応答時間を確保しつつ、適切な稼働率を保てます。応答率と稼働率を両立できることは、主なメリットの1つです。
2. 人件費を削減できる。
短時間勤務者の採用は、人件費の削減にもつながります。必要な時間帯に集中して人員を配置できるため、最小限のコストアップで応答率の底上げと顧客満足度の向上が図れます。
例えばフルタイムの方を採用する代わりに4時間勤務の方を採用すれば、人件費は半分で済むわけです。この点も、短時間勤務の方を採用するメリットといえます。
3. 採用難を解決できる。
世の中には以下のように、仕事をしたいけれどもフルタイムでの勤務が難しいという方が存在します。
- 小さい子どものいる主婦
- 学生
- ダブルワークを行っている方
上記に挙げる方には短時間勤務という手段を用意することにより、活躍してもらうことが可能となります。
例えば「9時~18時」での勤務が難しくても、「9時~13時」「13時~18時」というように分ければ応募したい方も出てくるでしょう。短時間勤務者の採用により人員の確保も容易になることは、採用難を解決できる大きなメリットとなります。
4. 離職を防げる。
さきに解説したとおり、短時間勤務への対応は離職への対策として広く活用されています。働く人が将来以下のような状況になった場合でも、短時間勤務の制度があれば離職というリスクを冒すことなく、仕事を続けられるメリットが得られることは見逃せません。
- 親の介護を行う
- 出産や育児を行う
- 自身が病気やケガのため、長時間働けない状況となる
コールセンターにとっても、採用する負担がなくなることはうれしいものです。この点でも、短時間勤務にはメリットがあります。
短時間勤務への対応により、正午前後や夕方以降の時間帯も稼働する席数を減らさずに済む
フルタイムで勤務する人は勤務時間中において、どこかのタイミングで食事休憩を取ることになります。もしオペレーターごとに時間をずらして食事をとるというルールを採用した場合、昼や夜の時間帯に稼動する席数が減ってしまう恐れがあります。短時間勤務の人をこの時間帯にあてることで、昼休みや夕方以降の時間帯でも席数を維持し、サービスレベルの確保が可能です。
ここでは2つの例を取り上げ、その効果を考えていきます。
例1:ウィークデーの9時から18時まで受け付けるコールセンターの場合
オペレーター全員がフルタイムで出勤・退勤時刻も同一、昼休みを交代で取るケースが考えられます。
もし昼休みを受付休止にできれば一斉に食事ができますが、この時間帯は問い合わせも多く入ってくるものです。だからといって昼休みを3交代で取るようにすると、以下のように11時~14時までの時間帯で席数が3分の2になってしまいます。
この時間帯に3時間だけ勤務する方をあてれば、「問い合わせの多い時間帯に対応できるオペレーターが少ない」といった事態を一挙に解決できます。人件費の増加が最小限で済むことも、大きなメリットの1つです。
例2:2交代制で、9時から21時まで受け付けるコールセンターの場合
早番は9時~18時まで、遅番は12時~21時までといった勤務形態を取る場合が考えられます。食事休憩を交代で取る場合、時間帯別の席数は以下のようになることが考えられます。
フルタイムの人だけでコールセンターを運営する場合、午前中や夜間帯はオペレーターが不足し、午後は過剰となりがちです。もし午前中や昼休み、夕方以降の入電が多い場合は、短時間勤務の人を採用し活躍してもらう方法が有効です。
さきの図に、9時~13時まで、17時~21時まで勤務する人を増やすと、時間帯別の席数は以下のようになります。
この状況であれば早番・遅番とも遠慮なく食事休憩を取れ、かつ昼休みや夕方以降の時間帯にも対応できています。「電話がつながる」ことは顧客満足度の向上につながりますから、短時間勤務への対応は重要なポイントといえるでしょう。
短時間勤務の導入には多くのメリットがある。積極的な導入をおすすめ
ここまで解説した通り、コールセンターで短時間勤務を導入することにはさまざまなメリットがあります。それぞれのメリットを、以下の表にまとめました。
立場 | メリット |
---|---|
センターの運営 | 採用を行いやすく離職者も減少するため、就業者を確保しやすくなる コストをかけずに応答率や平均応答時間を改善できる |
オペレーター | フルタイムでなくても、空き時間を使って働ける。 離職せずに働き続ける選択が可能になる |
顧客 | 電話がつながりやすくなり、聞きたいことを迅速に確認できる |
もっとも、デメリットがないとはいえません。管理すべきオペレーターが増えることは、その1つに挙げられます。しかしデメリットよりも、シフトを組む際の自由度が増すメリットのほうが大きいことでしょう。もし短時間勤務制度を導入していないコールセンターがあれば、積極的な検討をおすすめします。
参考:
月刊コールセンタージャパン編集部: コールセンター白書2019. リックテレコム, 東京, 2019, pp.50-58
アデコ「コールセンターで働くメリット 初めてのコールセンターガイド」:https://www.adecco.co.jp/useful/topics/telemarketing_guide/02
かんでんCSフォーラム「コールセンターの仕事って、どうなんだろう?」:http://www.kcsf.co.jp/contact/job.html