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カスタマーサクセスカンファレンス「BRIDGE 2020」 イベントレポート

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SaaS の発展と共に“カスタマーサクセス”という言葉もここ2,3年でよく聞くようになりました。 元々アメリカの Salesforce という顧客管理サービスを提供している企業が提唱した言葉ですが、日本ではどのような盛り上がりを見せているのでしょうか。

11月9日、10日と2日間に渡り、日本最大級のカスタマーサクセスカンファレンス「BRIDGE2020」が開催され、 最先端のカスタマーサクセス事例を聞くことができました。

カスタマーサクセスカンファレンス「BRIDGE 2020」 とは

近年、国内外で大きな盛り上がりを見せる“カスタマーサクセス”をテーマにしたカンファレンス。(オンライン開催)
Day1は「深める」をテーマとし、カスタマーサクセス単体でどう成果を出し、極めていくか、全体戦略から顧客対応の設計に至るまでを考えていきます。
Day2は「広げる」をテーマとし、他部署とどのように連携を進め、最終的にどのように全社的にカスタマーセントリックな組織を築いていくかを考えていきます。

株式会社SmartHR 代表の宮田氏、株式会社メルカリ CEOの 田面木氏をはじめ、国内の有名サービスの経営陣やカスタマーサクセス担当者の貴重な話を全16セッションに渡り聞くことができるとあって、2日間で1,000名以上が参加しました。

筆者もいくつかのセッションに参加し、日本を代表するカスタマーサクセス担当者の考え方や事例を聞くことができたので、本記事で紹介したいと思います。

Day1

オープニング

オープニングは、主催者の丸田絃心氏。
丸田氏はカスタマーサクセスのコミュニティ CS カレッジを主催しています。

カスタマーサクセスとは「経営」である。

丸田氏はカスタマーサクセスの経営的重要性について語りました。
顧客を成功させるだけではなく自社も成功させる。それを実現するためにはカスタマーサクセスを単なる顧客担当とするのではなく、顧客の成功が自社の成功に還元されるような仕組みを創る必要があると訴えます。

顧客に対して優れた体験や求める成果を提供し、それが利用継続や顧客単価の向上につながることで、自社のサクセスにもつながる。そのためにはカスタマーサクセスがなくてはならない存在なのです。

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丸田氏のカスタマーサクセスに対する熱いメッセージとともにイベントがスタートしました。

経営陣と伴奏し結果を残すカスタマーサクセス戦略設計

株式会社ビービット 礒野 亘氏
コミューン株式会社 岩熊 勇斗氏

カスタマーサクセス担当者は、どのように経営陣と向き合ってきたのでしょうか。
法人向けサービスを提供する企業での経験があるお二人を迎え、セッションが行われました。

お客さんが成功すれば事業は成功するか?

岩熊氏は、"事業の成功という目的達成”のための手段として顧客が成功するべきと考えています。 しかしながら、お客さんの成功と事業の成功の間には”溝”があるということを訴えました。

例えば、サービスのコア機能は充足してはいるものの、「もっとより良く使いたい」「こういうことがやりたい」という意欲を顧客が持っていても、製品ラインナップがないことによってそれを満たせていないといった状況です。
そういった顧客と事業の溝を埋めることが重要だと、岩熊氏は考えます。

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事例を共有することで他部署にもサクセスが拡がる

磯野氏はカスタマーサクセスにも関わりながら、インサイドセールスの責任者も兼務しています。
他部署からカスタマーサクセス部門へどんな要望があるかという問いに対し、"事例の共有"をあげました。
顧客の課題解決の事例を知っていることで、インサイドセールスが見込み顧客と話す際に、 提案の幅が拡がることになり、ひいてはセールス対象の拡大にもつながっていくとのこと。

先駆者が語る成功するヘルススコア、失敗するヘルススコア

Sansan株式会社 山田 ひさのり 氏
株式会社ビズリーチ ミヤ アンジェリン 氏
HiCustomer株式会社 高橋 歩 氏

カスタマーサクセスの現場の多くでは、“ヘルススコア”が使われています。
顧客の健康状態を示すヘルススコアの数値を設定し、状態の変化を予期することで適切なタイミングでサポートすることができるのです。
例えば、点数が低く、解約兆候のある顧客に対しては優先的にサポートすることで解約を防ぐことができます。アップセルの余地がある顧客には営業がフォローを入ることで、エクスパンションにつなげることもできます。
しかしながら、ヘルススコアはサービスや企業ごとに設定や運用方法が異なり、新規事業のカスタマーサクセス担当者も手探りで行っていることが多いのが実情です。

法人向けサービスを提供する2社の実例を元に、ヘルススコアの設計・活用・改善方法などの話を聞くことができました。

ヘルススコア設計の実例

Sansan のヘルススコアは4つの軸、Deployment(利用環境が整備されているか)、Engagement(顧客との距離感)、Adoption(プロダクトの利用率)、ROI(お客さんに利益を出せているか)で切って、それぞれに対して指標を設定。その合計点がヘルススコアの点数となります。

カラーレンジで管理

ヘルススコアを4つの項目に分けています。 例えばオンボーディングの成功の指標として、「支援期間中にこの色にしなければいけない」といったわかりやすい目標を設定することができます。 イエロー、レッドになってしまった顧客は、チャーンを防ぐためにサポートをしたり、 グリーン、ライムはエクスパンションを狙うための施策が自発的に行われるようになっていきました。

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ビズリーチの Harmosという採用管理システムでは、最初は継続率との相関性をヘルススコアに採用していそうです。 しかし、本当にお客さんの成功になっているかわかりづらいということもあり、 現在は顧客の成果や、体験に満足しているかというのを合わせたヘルススコアにしているとのことでした。

ヘルススコアを色で分けるというのは、通知が来たときにも直感的に判断できるため組織にも浸透しやすそうです。

Day2

カスタマーサクセスはマーケティングがお好き 〜カスタマーマーケティングの蜜と毒〜

Asana Japan株式会社
長橋 明子 氏

カスタマーサクセスが認知される中で、最近カスタマーマーケティングという新しい言葉が生まれ、筆者も SNS などでチラホラとその言葉を聞くようになりました。
カスタマーマーケティングとは、どんな言葉なのか、そしてどんなメリットがあるのかを蜜と毒に例え、まとめてもらいました。

カスタマーマーケティングが生まれた背景

カスタマーマーケティングは既存顧客を対象としたマーケティングです。
①カスタマーサクセスの集約型モデルの限界と、②既存顧客からの収益の有益性の2つの要因があります。

日本のカスタマーサクセスの主流はカスタマーサクセスマネージャーがつく「ハイタッチ型」であり、そのため顧客数の増加と比例して人員が必要になっていきます。
また、1ドルのアップセル収益を獲得するためのコストは、新規顧客獲得のわずか37%であることから、既存顧客からの売上獲得の優位性が高いと言えます。 こういった考え方からカスタマーマーケティングから生まれました。

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カスタマーマーケティングのメリット(蜜)は?

カスタマーマーケティングのメリットは以下のようなことがあげられます。

  • カスタマーサクセスをスケールできる(顧客が新しい顧客を連れてくる)
  • LTV向上
  • 既存顧客だけではく、潜在顧客にも効く
  • 正しい顧客に届く
  • 大規模な投資が不要

カスタマーマーケティングのデメリット(毒)は?

  • 組織と業務が曖昧 (カスタマーサクセスなのかマーケティングチーム所属なのか?KPIは?)
  • 必要なスキルセットを持つ人材不足 (カスタマーサクセスはホスピタリティなど、マーケティングは数字ドリブン。両方の視点が必要。)
  • 価値観の分断リスク (違うマインドセット、スキルセットを持っている。)
  • 車輪の再発明リスク (担当者が試行錯誤しながら作り上げていく必要がある。)

カスタマーマーケティングの始め方

長橋氏によると、カスタマーマーケティングを始めるには、成功している顧客がいることが大前提。まずはそこを育て、プロダクトの代弁者となってもらう必要があるとのことでした。

CS組織がぶつかる壁と乗り越え方

株式会社リンクアンドモチベーション
杉山 晴香 氏
ベルフェイス株式会社
小林 泰己 氏
ワークスモバイルジャパン株式会社
萩原 雅裕 氏

ここ数年でカスタマーサクセスは盛り上がってきたものの、5年前はほとんど聞くことがないような言葉でした。
そんな中カスタマーサクセス組織を立ち上げ、思考錯誤しながら成長させてきたベルフェイス。
そして、創業から5年経った後にCS組織を立ち上げたワークスモバイルジャパンは、 どのような課題があり、どのように乗り越えてきたのか、リアルな話を伺うことができました。

カスタマーサクセス担当者が市場にいない中、どのようにメンバーを採用していたのか?

ベルフェイスでは、「売り切り型の商材のセールスをやっていて、顧客を幸せにできているのかモヤモヤしている人」や、「マーケティングをやっているけど、数字以外も見たいというような人」を探してピボットさせていったそうです。
ワークスモバイルジャパンの LINEWORKS においても、マーケティング出身者、セールス出身者などをカスタマーサクセスにピボットさせていきました。

どちらの企業でもカスタマーサクセスにおいては 1:N 的な考え方が求められることもあり、様々な経験のあるメンバーでチームを構成したことが多様性を生み、良い結果につながったようです。

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どのような壁があったのか?

ベルフェイスのカスタマーサクセスには、現在67名ものメンバーが在籍しています。
提供プロダクトや抱える顧客、自社のメンバーも増えていく中で、顧客に価値が届きづらくなってきたことを実感しているそうです。 というのも、社内で発信される情報が多くなりすぎて社内メンバーの理解が追いついていないなどの課題があり、現在はこの課題と向き合っているとのことでした。

まとめ

各セッションが実体験をベースとした内容だったため、実践的な学びが数多くありました。
カスタマーサクセスの最前線の情報をわずか2日に凝縮して聞くことができる内容の濃いイベントでした。 海外から始まった“カスタマーサクセス”という考え方ですが、 日本でもカスタマーサクセスを実践する人材が増えていることを感じられました。

来年はもっと盛り上がりを見せるのではないでしょうか。 カスタマーサクセスに興味のある方は、次回開催時には是非参加をご検討ください。

www.bridge.customer-success.college