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「カスタマーサクセスナイト ~ Road to KPI・マジックナンバー ~ 」イベントレポート

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こんにちは、編集部の畠です。
本記事では、2017年12月14日に開催された「カスタマーサクセスナイト vol.4」の様子をお届けします。

突然ですが、皆さんはカスタマーサクセスという言葉をご存知でしょうか?

カスタマーサクセスソフトウェアを提供している Gainsight 社によると、カスタマーサクセスとはこのような意味です。

カスタマーサクセスに求められる役割は、顧客が満足いく結果を得られるようにサポートすることです。顧客の満足度を高めるためには、人のリソース、適切なプロセス、そして十分なデータが必要であることは言うまでもありません。つまるところ、顧客が自社製品をいつ、どのような理由で、どのように実際に使用するのかを現時点で把握していないのであれば、まずは顧客が自社製品を上手く使用できるように導いてあげることです。

顧客の状態を的確に把握するには、ユーザーを注意深く観察し、データなどに落とし込む作業が求められます。しかし、「ユーザーのどういった行動を数値として計測するのか?」といったことはサービスや規模によって異なります。

今回のカスタマーサクセスナイトでは「Road to KPI・マジックナンバー」をテーマに、各社が追っているKPI(マジックナンバー)やその数値を追っている理由、計測の方法について共有いただけるそうです。

カスタマーサクセスナイトとは?

カスタマーサクセスのノウハウ・悩みを共有し、日本でのカスタマーサクセス職の認知を広げることを目的としたコミュニティです。

csnight.connpass.com

20時、いよいよイベント開始です!

Onboardingの成功率を上げよう

トップバッターは、アーキタイプ株式会社の鈴木大貴さん。

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アーキタイプは BtoB 領域のSaaS企業に投資を行う会社です。鈴木さんは前職も合わせると SaaS の業界が9年目とのことで、どんな話が聞けるのか楽しみです。

テーマは「Onboarding の成功率を上げよう」。

Onboarding(オンボーディング)とは、組織の一員やサービスのユーザーとして新しいメンバーに手ほどきを行い、慣れさせるプロセスのことです。

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何故オンボーディングが SaaS において重要かというと、オンボーディングの成否が LTV(顧客生涯価値)に大きな影響を及ぼすからです。新規ユーザーがそのサービスを使いはじめた後、その使い方を理解出来ずに成果に繋がらなければ、最終的には離脱につながってしまいます。

鈴木さんはオンボーディングの成功率をあげるために重要なポイントは下記の3つだと考えています。

  • 正しい顧客に使ってもらおう

  • 顧客にとっての”最初の成功”は何か、考えよう

  • “最初の成功”の達成まで誘導しよう

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まず「正しい顧客に使ってもらおう」ですが、顧客は業務の課題解決を信じてプロダクトを選定しています。
正しいメッセージで顧客を獲得していないと、そもそもターゲットではない顧客を獲得することになりますし、導入後に「思ってたのと違うぞ?」というようなことが起こり、サポートコストの増大や離脱につながります。コンバージョンではなく、LTV の最大化を意識したマーケティングが大事とのこと。

また、そこでCSチームができることとして、チャーン(解約)の理由を分析し、マーケティングチームへの改善要求を行うことを例にあげていました。これによって、マーケティングメッセージをより正しい顧客に向けて発信していくことができます。

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2つ目の「顧客にとっての”最初の成功”は何か、考えよう。」
鈴木さんは、それは導入決定者がプロダクトの価値を実感するまでの体験としています。

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そして3つ目。「”最初の成功”の達成まで誘導しよう」。
“最初の成功”にたどり着く過程を”最短”にするのが良いようです。トライアルの申し込みから24時間以内にオンボーディングのプロセスを完了したユーザーは、未完了のユーザーに比べ 80%有料転換率が高いというデータもあります。いかに“最初の成功”までの障害を取り除けるかが重要なポイントになります。

しかしながら、顧客がプロダクトをどう使っているのかを理解するのは難しいのが現状です。そこで、それらを把握できるツールを鈴木さんが現在開発中とのことでした。

セールスフォースのカスタマーサクセス

続いては、株式会社セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセス本部 サクセスマネジメント部 部長の北川博一さん。

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日本のセールスフォースでは、2005年頃からカスタマーサクセスという取り組みを始めました。
最初は解約を検討している顧客に訪問して、個別にヒアリング・対応を行なっており、なかなか多くのお客様をカバーできない状況でした。
2010年になって、利用状況をスコアリングしようという意向に変化していったため、チャーンの傾向にある顧客をデータから絞っていけるようになりました。ただ予知ができても、依然としてそれを解消するのに時間がかかったり、やはり対応できる顧客数に限界がありました。

そこで、数年前からはオンボーディング段階の顧客にコンテンツを提供していくようにしました。新規顧客の立ち上がりを成功させるような取り組みを実施したのです。結果、チャーン自体を減らすことが出来ました。

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カスタマーサクセス本部で追っている数値(マジックナンバー)は上記の3つです。

これらの指標を選んだ理由については、このように話していました。
契約更新率は、製品の価値をしっかりと提供できているかを測る指標になりますし、継続的に製品改善を行うことができているかを測る指標と言えます。また、しっかりと使い込んでもらうことが製品価値を正しく享受してもらう上では重要なため、活用スコアも見ています。 そして、私たちの施策が顧客に届いているか、伝わっているかを測るために反応率を見るようになりました。

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また、契約更新率をあげるためにオススメ施策として上記のようなものを挙げていただきました。

急成長中のスタートアップのCS対応は?

3番手は、クラウドサイン デザインチーム/カスタマーサクセスチーム マネージャーの佐伯幸徳さん。
テーマは「CSチームのKPI」。

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クラウドサインでは「お問い合わせの回答速度」「チャーンレート」の2つを測っています。
まず定量的に計測できるところから始めているそうです。

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サポートツールとして intercom というチャットツールを利用中。プロダクトの成長に伴い、問い合わせ数も増えていったため、CSチームを作ることにしたそうです。

チーム発足後は、問い合わせ数の増加に対し、対応時間は顕著に短くなりました。

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チーム内で行った工夫として、定型文を拡充させていきました。intercom の定型文は使い勝手もよく、同じものをチームで使えるので、対応クオリティの均一化にもつながります。

また、intercom にはヘルプセンター機能があり、記事URLをチャットに埋め込めるのも便利です。 以前はロゴマークだったチャットアイコンをスタッフの顔写真にして安心感を演出したり、相手が席を外している場合には長めの文章で丁寧な説明を送信するといった工夫を行ってきました。

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満足度も上昇しており、結果に繋がったそうです。

今後は、チャーンレートといった出口の部分だけではなく、オンボーディングプロセスの改善に向けて動いていくとのことでした。

マーケティングツールを手がける Repro のマジックナンバー

最後の登壇者は、 Repro の佐々木さん。 3月に Repro に入社し、CSの立ち上げ等を行ってきました。 Repro はアプリのグロースハックツールを提供していますが、運用や戦略企画といった2軸の事業を行っています。

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Repro では、カスタマーサクセスとテクニカルサポートでそれぞれチームを分けています。

CSはオーケストラ!

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Repro におけるCSは、クライアントと向き合う仕事以外にも、適切なタイミングでセールスと連携してアップセル/クロスセル提案をしたり、開発チームとクライアントが直接会話できる仕組みを作るなど、色々なものをつなげる役割を担っています。それを佐々木さんはオーケストラに例えています。

CSを立ち上げ、実践していく過程で、カスタマーサクセスの担当者は色んな領域にまたがって仕事をすることが多いため、ビジネス領域で万能でなければならないと感じているそうです。

カスタマーサクセス担当者に求められる役割を海外の事例を中心に調べてみたところ、非常に多くの項目があったそうです。その中でも佐々木さんは、KPI達成のために、“オンボーディング”と“アクティベーション”の2つが最も重要だと考えています。

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上記は、Reproで実際に追っている KPI です。

また、佐々木さんはクラウドツールである以上、いつかは卒業(解約)するものだと考えています。
なぜなら、プロダクトのフェーズによっては Repro がtoo matchだったり、物足りなかったりすることもあるからです。
そんな中、佐々木さんは卒業(解約)した後もファンでいてもらえるようなツールを提供していきたいと考えています。

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オンボーディングのフェーズで一気に成長させないと、解約につながる傾向があるそうです。

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そして、ユーザーが使いこなせている機能と LTV には相関関係があり、下から各段階を経ていくことで LTV の向上(1年後の契約更新)につながることも分かっています。

LTV 最大化のために「2ヶ月でオンボーディングを達成しきる」ということを目標にしています。この目標は、契約更新や解約といったユーザー行動を分析して導きだした数値とのこと。一番上のAPI連携まで完了させておくことを、現在のマジックナンバーとして設定しているそうです。

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その他、週あたりのセッション時間が20分以下というのが3週間続くと、解約傾向が高いといったことなどが分かっています。

所感

出口だけではなく、入り口もケアしよう!

4人の登壇者の話を聞いていく中で、カスタマーサクセスへ向けた動きとして、まずは解約など出口に近い部分にいる顧客への対応から始めていることが見て取れました。その後はトライアルなどの利用開始間もない段階のユーザーに対して、理想的な使い方をしてもらえるようなアクション(オンボーディング)へと移っていく様子が伺えました。

解約を防ぐために出口付近でどうにかしようとしても間に合わない場合もあるでしょうし、必要以上のコストがかかるというのはうなずけますね。
重要なのは、最初の段階で正しい顧客を獲得し、正しい使い方を早めに理解してもらうということのようです。これによって、そもそもの解約理由を潰すことができます。

できることから始めよう!

イベント参加者と話す中で、自社に合ったカスタマーサクセスのKPIを設定し、計測・改善できている企業はまだまだ少ないように感じました。ここ最近カスタマーサクセスという言葉は広まりつつありますが、KPIやマジックナンバーを設定し、改善に向けて行動していくのは一筋縄ではいかないようです。

そんな中、フェーズは違えど仮説を立てながらカスタマーサクセスに向けた取り組みを実践している4社の事例を聞けたのは、非常に参考になりました。カスタマーサクセスを達成したいという大きな目標に対して、できることからはじめ、試行錯誤していける人材や企業こそが顧客とともに成功に近づいていけるのではないかと思いました。

以上、「カスタマーサクセスナイト ~ Road to KPI・マジックナンバー ~」のイベントレポートでした。