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データ検知と分析で解約率を改善。Akerun入退室管理システム のカスタマーサクセス

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カスタマーサクセスという言葉をご存知でしょうか? アメリカの Salesforce 社が始めた顧客の成功を支援する活動の総称ですが、 ここ日本でも SaaS の増加とともに、カスタマーサクセスに力を入れる企業が増えてきました。 しかし、実際にカスタマーサクセスを始めようと思った際、何から取り組めばいいのでしょうか。

1年半前からカスタマーサクセスの取り組みを始め、実際に解約率やヘルススコアを改善してきた Akerun入退室管理システム の塩見さんにお話を伺いました。

Akerun入退室管理システム は Akerun Pro の場合、オフィスのドアのサムターンに取り付けることで、物理鍵なしでスマートフォンやICカードだけで鍵をあけられるようになり、さらに入退室管理もできるサービスです。

カスタマーサクセスの取り組みは1年半前に始め、サービス開始時から“ヘルススコア”というお客さまの健康状態を指す指標を計測しています。ヘルススコアが悪いということは、あまり利用されていない、場合によっては故障していることが考えられ、解約リスクが高い状態を意味します。
製品の出荷台数が順調に伸びていく中でヘルススコアが低下している時期があったため、健全な状態にもっていくのにこの1年半で様々な施策を行ってきました。

検知・分析に基づいた対応を推進

まず弊社のカスタマーサクセスチームでは、分析の時間をしっかり取るようにしています。利用データを事前に詳しく分析してからカスタマーサポートを行うことで、サポートの品質向上に繋がりますし、有意義な対話が実現できると考えているからです。具体的な施策をご紹介します。

検知によって、電池が自動的に送られる仕組み

Akerun入退室管理システムのAkerun Pro は電池で動いてますので、電池が切れれば動作しなくなってしまいます。電池残量のチェックはお客様自身で行うのが一般的だと思いますが、弊社ではお客様の電池残量をモニタリングしています。これによって、残量が一定の数値を下回ったら自動的に電池が担当者に送られる仕組みを作ることができています。

また、扉の鍵自体の異常についても、鍵の開閉状況を分析し、早めにお客様に確認を取るようにしています。例えば、1日あたり30回のドアの開け閉めがあったにもかかわらず、今週になって0回になったという状況があれば、お客様に連絡を取り、「使われていない状況ですが、何かありましたか?」とお声がけをし、担当者が変わった、オフィスの移転があったなどのお客様の変化を把握するようにしています。このような取り組みの結果、解約を防止することができたケースもあります。

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最近では機器や利用状態の不具合を検知した場合に、お客様にメールを送ったり、管理画面で表示することで、直接フィードバックができるようにしています。

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開発チームへの依頼もデータに基づいて行う

以前はお客様からあがってきた要望をサポートチームから開発チームにそのまま伝えていました。
しかしながら、ただ要望を伝えるだけだと開発チームとしては「なぜその機能が欲しいのか?」「その機能が欲しいユーザーはどれくらいいるのか?」ということがわからず、開発チームの主観で実装可否が決まってしまうことがありました。

そこで、現在はカスタマーサクセス部が主体となって、開発チームに依頼を出すようにしました。 これくらいのお客様がこの機能を欲しがっているといった定量的なデータを出し、だから優先度が高いんだと説明するようにしています。このようにすることで、依頼内容を納得してもらいやすくなり、チーム一体となって開発を進めることができるようになりました。

最適なチャネルで対応し、解決時間を短縮

カスタマーサポートは、電話とメール、Webビデオチャットで対応しています。基本はメールや電話ですが、状況に応じてビデオチャットで対応することもあります。

特に導入初期は、お客様も製品に初めて触るのでパーツの名前がわからず、電話で案内する際にどうしても時間がかかっていました。そこでビデオチャットを取り入れ、「ここをこうしてください」といった感じで実際の製品を見ながら伝えるようにしました。その結果、電話対応時の半分以下の時間で解決できるようになりました。

実際に数値は改善したのか?

1年半前のヘルススコアは65%〜70%だったのですが、これらの施策によって最近では90%前後をキープできています。そして、解約率も改善されました。

ここまでスコアを改善できたのは、データ分析が活きているのに加え、ヘルススコアや解約率の改善のためにやれることはやろうというスタンスで、サポートコストはそこまで考えずに取り組んできたからだと思います。 例えば、忙しくて設置できない顧客がいることが分かったため、有償で製品の設置や説明に伺うといったオプションサービスも提供するようにしました。その他にも、顧客の利用状況を踏まえてより良い運用の提案をすることもあります。

今後は、お客さまの利用パターンを複数に分類し、各パターンごとに解約率を改善する施策や最適な運用提案ができないかということを考えています。

所感

データドリブンとヒューマンタッチのバランスの良さ

2019年の世界的なカスタマーサクセスイベントの PULSE では、アメリカではデータ(テクノロジー)ドリブンなカスタマーサクセスが進みすぎて、顧客の顔が見えなくなっているといった問題があげられていました。
ヒューマンタッチすぎると、カスタマーサクセスのコストが高くなってしまいますが、日本では逆にデータドリブンなカスタマーサクセスはまだまだと言われています。

そのような状況の中、 Akerun入退室管理システム では多くの場面でデータ分析に基づいた対応を意識的に取り入れていました。また、それだけではなく、実際にお客様と対話することも大切にしていて、カスタマーサクセスにおけるデータドリブンとヒューマンタッチのバランスの良さを感じました。

まだまだ日本でも取り組みが始まったばかりのカスタマーサクセスですが、こういった素晴らしい運用事例をサポートタイムズでは追っていきたいと思います。