2018年6月28日、ワールドカップ・ポーランド対日本戦の夜。 それとは別の、CSに熱い想いを持った人たちが集まるイベントがあるというので、西新宿にあるエン・ジャパンまでやってきました。イベント名は「BtoB×SaaS×CS LightningTalks #3」
どんなイベント?
BtoB × SaaS のCS現場で活躍している方々が日々の業務の進め方や工夫など、眠っているノウハウを共有するイベントです。 毎回、リーダーやマネージャ、濃い現場ノウハウを持っているカスタマーサクセス(サポート)担当者が有志で登壇し、5分程度のプレゼンテーションを行います。
今回のテーマは、
「クライアントと対面で会話する」業務でのリアルな工夫、成功談、失敗談です。
クライアントと対面で話す業務について、現場で実施した工夫、成功したこと、失敗したことを6社のカスタマーサクセス担当からお話が聞けるそうです。
エンジニアとの情報共有の工夫、ハイタッチ(個別にお客さまに対応する方法)のクライアント対応で気をつけていること、ユーザー会のコツなど、とても実践的な内容でした。
エンジニアとの情報共有を工夫してみた。
トップバッターは イベント主催者でもある Repro の駒谷さん。
最近、他社のカスタマーサクセス担当の方から、こんな悩みを教えてもらったそうです。
「要望をリストに書いているけど、開発者にその深刻さが伝わっている気がしない。」
Repro では、ドキュメント共有ツールを使い、機能要望や解約理由ヒアリングの様子を記事のような見やすい形にして社内共有してみたそうです。 その結果、普段クライアントと対面で接する機会が少ないエンジニアにもユーザーの課題感や重要性を深く理解してもらうことができ、 エンジニアからCSに相談がくる事が増えたとのこと。
CS担当者には、お客様の要望や課題を他部門に正確に伝える工夫が求められるのだなと感じました。
そうしたちょっとした工夫が結果としてサービスの品質向上に繋がっていくのだと思います。
ハイタッチのクライアント対応のコツは?
続いては、マーケティングサービスを展開しているエフ・コードの瀧本恭兵さん。
クライアントと対面で会話する際に気をつけていることをお話しいただきました。
クライアントと言っても、その定義は状況によって変わります。特にBtoBにおいては、ひとりではないことも多いそうです。
- 会社
- やりとりする担当者
- 発注者
そのため、瀧本さんは各関係者の相関やニーズを洗い直した上で、クライアント一人ひとりの課題を面談を通して解決していくようにしたそうです。その結果、信頼感やサービスに対する評価を改善していくことに成功しました。
そのほかにも、「たまたま目の前にいる人が「味方」になるとは限らない」「ひとつずつ、リクエストに答え、味方を作っていく」など、ハイタッチのクライアント対応における日頃の気づきを共有していただきました。ハイタッチのクライアント対応においては、関係者の利害関係などを意識しながら、コミュニケーションを取っていく姿勢が求められるのだと思いました。
モチベーション曲線でクライアントを自走へ導く
3番手は、パーソルキャリアの森本康弘さん。
DODA Recruiters という、人材会社を介せず、ダイレクトに求職者にアプローチできるサービスの事例をお話しいただきました。
最初は企業向けにCS部隊を設けていなかったのですが、人事担当者に製品の操作方法を習得してもらうことが課題に上がってきたため、専属のシニアトレーナーを設けました。 モチベーション曲線を設定し、早期のフォローを実施するようにしたそうです。結果、クライアントが自走できるような体制を築くことができ、導入率やリピート率を大きくあげることができたそうです。
お客さんが、導入を諦めてしまう前に丁寧にサポートをしていくことが利用継続や満足度向上につながっていくんですね。
顧客の成功事例を他の顧客の成功に繋げる
4番手は、ABEJA の丸田絃心さん。
ABEJA は、AI(人工知能)のディープラーニングを活用したサービスを提供している会社です。
- 顧客を対面で手厚く支援したい。
- 顧客に大きな成功を実感してほしい。
- 顧客の真のニーズを知りたい。
しかし、そのためのリソースが足りない。
これらの課題を解決するために、顧客が顧客を成功させていく仕組みをつくることにしました。ユーザー会を開き、そこで各社に成功体験を共有してもらうようにしたそうです。登壇企業(成功した顧客)も、ユーザー会で発表することで、自らの成功をより実感することができるとのこと。
ユーザー会は多くのサービスで開催されていますが、「何故それをやるのか」という目的がはっきりしていないケースもあるように思います。 明確な目的を持つことで、ユーザー会から得られる結果も大きく変わるように感じました。
会話よりも実りのある対話をデータに基づいて実践
5番手は Akerun を展開している Photosynth の服部貴之さん。
Akerun は販売を始めてから順調に出荷台数が伸びていたものの、健康率(サービスがちゃんと活用されているかどうか)が低下していた時期がありました。
服部さんは、なぜ下がっていたのかをクラウドにあるデータを元に個別に判断していくことにしました。そして、各ユーザーがどんなことを課題に感じているのかを把握し、それぞれに適切なアプローチをしていくようにしました。そうした取り組みの結果、健康率を上げていくことができるようになりました。
まずはデータ分析によってユーザーの利用状況をしっかりと把握することが重要とのことです。その上で顧客と対話をすれば、真の課題を発見しやすくなり、サービスの稼働率・正常率を高めることができるとのことでした。
顧客は「会話」よりも実りある「対話」を望んでいると考えられます。そして、実りのある「対話」を継続することで、「アップ&クロスセル」につながります。
Akerunさんは、ハードウェアと SaaS を組み合わせたユニークな事例です。そのため、ユーザーの利用状況を分析する際、調査する項目が多岐に渡りそうだなと思っていました。そんな中、ユーザーデータをしっかりと分析し、より良い対話を実現されている点が素晴らしいと感じました。
セミナーをOKRに基づいて改善
最後はヌーラボの鍋島さん。 ヌーラボではカスタマーサクセスという大きな目的のために、サポートチーム、カスタマーサクセスチーム、グロースハックチームの3つのチームがあります。カスタマーサクセスチームでは、主にユーザーのトレーニングや個別相談など新規顧客をメインに対応しているそうです。
その中の一つの施策としてハンズオンセミナーを定期的に行っています。プロダクトの性質として、個別機能そのものを使うのは簡単ですが、チームで運用する仕組みを根付かせるためには、運用の流れやポリシーを理解してもらうことが重要だと考えています。
そこで、一度に多くの人と話せるセミナーという場を活用しています。最大限の効果を出すために、以下の2点を意識しているそうです。
- 契約者や管理者などの意思決定者へのフォロー
- 知人の紹介(既に使っているユーザーの紹介)→セミナーを通してファンにになってもらい、新たな人をご紹介いただく。
セミナーのNPSや申込数、来場率、新規ユーザーの契約率を計測して、日々改善しているとのこと。
セミナーをなんとなく開催するのではなく、具体的に指標を決めて開催している点が素晴らしいなと感じました。
所感
今回で3回目の開催となった「BtoB × SaaS × CS LightningTalks #3」。 元々はセールスを担当されていた方など、登壇者がそれぞれのバックグラウンドを活かしてカスタマーサクセスに取り組んでいました。また、登壇企業それぞれに、カスタマーサクセスのカラーがあるように感じました。
イベントを通して普段はなかなか聞くことのできない各社のカスタマーサクセス事例を聞くことができ、非常に有意義な時間となりました。次回の開催を楽しみに待ちたいと思います。
是非次回はみなさんも参加してみてはいかがでしょうか。
今後もサポートタイムズではこのようなカスタマーサクセス関連のイベントを取材していきます。