こんばんは。編集部の畠です。
2018年10月9日に、アプリ解析ツールを提供している Repro さんで BtoB、SaaS、CS(カスタマーサポート、サクセス)に関わる人が集まるイベントが開催されました。本記事ではそのイベントの様子をお届けします。
BtoB×SaaS×CS とは?
BtoB×SaaS のCS現場で活躍している方が有志で登壇し、日々の業務の進め方や工夫など、眠っているノウハウをLT(ライトニングトーク)で共有するイベントです。
主催の駒谷さんによると、「話を聞いて良かったで終わらず、明日から使える実践的な内容にしたい」という思いのもと、このLT大会を開かれているそうです。
どんな内容が聴けるか楽しみですね。
オンボーディングトレーニングとしてのワークをやってみた。
トップバッターは主催者の駒谷徹さん。
自社ツール Repro を導入したばかりのクライアントと一緒に行った製品トレーニングのワークについて、やって良かったことや反省点をお話しいただけるそうです。
元々 Repro は顧客単価が高めで、ハイタッチ中心のサポートを行っていたとのことです。しかし、ユーザーが増えてきたため、ロータッチのスケールしやすい施策の必要性が高まり、製品トレーニングのワークを始めたそうです。
また、ワークという形式にしたのは、クライアント自身で施策を考えてもらうことで自走しやすい状況を作り、フォローのコストなどを下げていきたいという思いからです。
付箋やホワイトボードを使ってユーザーの行動やロイヤル化までのステップを書き、各ステップに優先度などをつけるワークを行いました。
ワークを行った結果、100件以上の課題や施策案が出すことができました。クライアントの中で今後行えるアクションがリスト化でき、製品を活用してもらいやすい状況を作ることができました。
失敗例としては、ワークを先生のように実施したところ、「Repro の担当者に任せておけば大丈夫だ」と思われてしまい、参加者がキーマンの上司ではなく、インターン生や新卒だけになってしまったとのことでした。結果として、メインでツールを活用してほしい人が参加しなくなってしまうことがありました。
そのため、誰に参加してもらう必要があるかをしっかりと伝えるようにして、メインで使う人に活用方法を理解してもらえるようにワークの進め方を改善していきました。
BtoB×SaaS×CSで学んだことを実践したら、CS工数が65%削減した話
続いての登壇者は、AIサービスを手がける BEDORE の遠藤功一さん。
なんと、本イベントのvol.2で学んだ内容を実践してみた結果について、共有いただけるそうです。
BEDORE では、システムに関する問い合わせが多く、問い合わせがある度にエンジニアに調査を依頼していたそうです。その際、Gmail に届いた問い合わせ内容をわざわざ手動で Slack にコピペしてエンジニアに伝えていたとのことで、手間がかかっていました。
そこで参考にしたのが、クラウドサインさんが行っていた「Customer centered design(顧客中心)」という取り組みです。クラウドサインのチームでは、問い合わせもすべてコミュニケーションツールの Slack に通知されるようにして、カスタマーサクセスチーム以外もカスタマーサポートを行っています。
BEDORE でもすべての問い合わせを Slack に自動で流すようにしました。そうすることによってエンジニアもエンドユーザーの声を日常的に受け取れるような仕組みを構築できました。結果として、エンジニアが問い合わせに積極的に反応できるようになりました。
ただし、エンジニアのリソースを割くのにも限度があります。
そこで、チーム内でサポート体制の理想像を話し合ったところ、「0秒サポート」(即レス)というキーワードが挙がり、自社のAIツールをチューニングして、自動応答の窓口を設置しました。
現在では自動応答率が50%になり、残りの50%のうち、30%をプロアクティブに回答できるようになったそうです。
BEDORE では、プロアクティブ回答率という指標があり、「Slack でメンションをつける前に回答が投稿される割合」と定義しています。
UXデザインに活用するカスタマーサクセス
3番手はアクシバースの能塚正基さん。
Shiftmation という病院など専門職向けの勤務シフト自動作成サービスを運営されています。
サービスの正式版リリース直後とのことで、社員数が限られており、CSが複数の役割を兼任している状況とのことです。
Shiftmation のユーザーは現場のスタッフ、店舗を管理する管理者、そして複数店舗を束ねる統括管理者の3タイプがあり、それぞれで見る画面が変わってきます。
そこで、アクシバースさんではアナログな方法を取り入れ、管理者の製品理解だけでなく、現場スタッフの製品理解も促せるようにフォローしています。
その一つとして、管理者が製品の操作方法をスタッフに説明しやすくなるようにチラシを作り、配布しているそうです。「こういうことをやってくださいね!」という内容を管理者がスタッフに簡単に説明できる環境作りに取り組んでいます。
製品導入の前後の体験を分断しない
ユーザーにより成果を出してもらうために、製品導入の前後でユーザー体験を分断させないことがCSの重要な役割だと能塚さんは考えています。ユーザーが製品導入前、導入後にどのような課題を抱えるかということを考え、必要な資料やサポートを積極的に提供していくことを大切にしています。
Tableauを使った、ユーザー行動の可視化と改善
4番手は教育系サービスを提供している Classi株式会社 の小坂井聖也さん。
Classi は学校で利用され、オンラインでテストの実施ができたり、学校入試で必要となったテスト以外の多面的評価も記録していけるようなサービスです。
これまではデータ推移や比較での効果測定、学校別のデータ計測などは行っていたものの、ユーザーそれぞれがどのように操作しているかまでは分かりませんでした。そこで、 Tableau というデータの視覚化ツールを使ってユーザー行動を追っていくことにしました。
Tableau を使えば画面遷移を作成することができます。
例えば、ツール上で課題提出をする際、”回答した後の画面”では離脱が多いことが予想されますが、実際は”入力内容の確認画面”での離脱が多いということが分かります。そうすると生徒さんの意識として「課題なのでちゃんと答えたい」や、「時間のある時に答えたい」ということで離脱しているのではないか?という仮説を立てることができます。
そのような仮説を元に、例えば「下書きをできるようにしてみたらどうか?」「回答後に編集できるという表現を加えてみてはどうか?」という改善案を考えられるようになりました。
EC ショップのように直線的なファネルでの仮設を立てることが難しい BtoB のサービスでも、行動パターンを可視化して「なぜ?」で深掘ることができれば、ユーザーの成功体験に繋がる仮説を出していけると実感しているそうです。
CSの僕が開発に半出向して見えてきたこと。
最後はビズリーチのカスタマーサクセスコンサルタント 原山拓さん。
原山さんは元々 CS のチームに在籍していたのですが、現在は開発チームにも半分籍を置いています。
上司に開発チームに参加してくるよう要請され、”現場の声を開発に届ける”というのをミッションとして捉えて数々の施策を実行しました。
もともとお客様からの要望の管理は、スプレッドシートで行っていたそうですが、字面だけでは伝わらないこともあります。
お客様からの本当の声を届けるために、これまではステコミ(何を作るかを意思決定をする場)に CS が入ってツッコミを入れていたのですが、開発の現場に原山さんが入ったことで、企画・立案の段階で CS の意見が加わるようになりました。これまでは開発チームの作りたいものが優先されやすいといった課題があったのですが、「本当にお客様が欲しいものはなんだろう?」と企画の段階から考えていけるようになりました。
顧客業務フローの洗い出しや仕様検討に積極的に関わっていくことを通して、最終的には開発チームとCSチームが同じ KPI を設定できるようになったそうです。
例えば機能Aを作るという際に、 KPI を「要望をいただいたお客様のうち、何%の企業が使い続けているか」などに設定するそうです。
開発チームに CS が入ることによって、顧客を意識したKPIが設定でき、開発メンバーも顧客視点を持てるようになりました。
まとめ
各社データを大事にしながらも、「実際のユーザーはどう考えるだろうか?」というユーザー行動の背景を考える姿勢を大事にしていました。また、サービス品質、サポート品質を改善するために、ユーザーに会いに行ったり、データを分析したりと、企業ごとに様々な取り組みがあり、個性がありました。ユーザーを深く理解するためには、あらゆる手を打ち続けることが大事なんだと改めて感じました。
また、 BEDORE の遠藤さんが、2回目のイベントで得たことを実際の現場で活かして結果を出されているというのは、まさに本イベントが実践的な内容になっていることの現れではないでしょうか。
BtoB×SaaS×CS は引き続き開催されるようですので、興味を持った方は是非メンバー登録してみてはいかがでしょうか?
以上、BtoB × SaaS × CS LightningTalks #4 のイベントレポートでした。