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「BtoB ThinK Customer Success Ver1」イベントレポート

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2017年6月7日に株式会社HDEが主催した、「BtoB ThinK Customer Success Ver1」に参加してきました。本記事では、イベントの内容や参加して感じたことについてまとめました。

「BtoB ThinK Customer Success Ver1」って?

「BtoB ThinK Customer Success Ver1 」は、BtoBに特化したカスタマーサクセス/サポートについて考えるイベントです。

atnd.org

今回が初開催となった「BtoB ThinK Customer Success Ver1 」。
今回はカスタマーサクセスに力を入れている各社が集まり、自社における様々な取り組みについて共有してくれるようです。BtoBのクラウドサービスに特化したサポートに関わる方々が対象のため、筆者にはぴったりなイベントです。

ということで、早速イベント会場へ。
今回は35人まで増席したとのことで、業界における関心の高さが伺えます。

Customer Success と 企業文化

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株式会社HDEの東郷さんより、「Customer Success と 企業文化」というテーマでの発表です。

東郷浩幸/株式会社HDE Customer Success Office担当


Office365やG Suiteのメールや認証のセキュリティをアドオンするSaaSを提供しているHDEさんでは、このような課題を抱えていたそうです。

・顧客との会話が少ない。
せっかくお客様が機能要望を上げてくれたはいいが、「貴重な意見に感謝します」という返答で終わってしまい、より詳細な内容について継続的に会話する姿勢が持てていなかった。

・情報発信が不十分だった。
事例紹介や今後の動向などを発信できていなかったので、お客様から「もっと情報出してよ」と言われることがあった。

・社内での情報共有が上手くいってなかった。
営業担当が変わった際に既存顧客の情報を上手く引き継ぐことができず、既存顧客のサポートが十分に行えないことがあった。

そこで、東郷さんは改めてお客様のことを深く知ろうと決意し、下記のような取り組みを実行に移したそうです。

1. Data Driven

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サービスログ、訪問履歴、問い合わせ内容、契約内容など全ての情報を一箇所に集めるようにしました。これによって誰もが簡単に顧客のステータスを把握することができるようになったので、社内での情報共有がスムーズになりました。また、データに基づいて顧客の退会傾向などを分析することができるので、事前に対策を講じることも出来ます。

2. Success Map

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社内メンバーの活動内容をそれぞれが把握したり、どのタイミングでどのようなサポートを顧客に提供すべきかを知るために、Success Mapを作って可視化しました。これによって、顧客の成功までの道筋が明確になったので、対応の抜け漏れも少なくなりました。

3. Success Room

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社員同士がお互いの活動を確認できる部屋を作りました。本格的な運用はこれからですが、カスタマーサクセス部署のVision共有にも役立つ場所になると考えています。


東郷さんは発表を通して、カスタマーサクセスを実現するためにはもっと顧客のことを知る必要があること、そしてもっと顧客に興味を持って知ろうとする姿勢の大切さを伝えてくれました。

お客様の成功によってのみ評価されるCSのあり方〜顧客視点でのCS KPI設定及び運用〜

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続いて、株式会社Combinator 石川さんの発表です。
テーマは、「お客様の成功によってのみ評価されるCSのあり方〜顧客視点でのCS KPI設定及び運用〜」。

石川優/株式会社Combinator 取締役 カスタマーサクセス部 部長


リファラル採用を活性化させるクラウドサービス「Refcome」 を提供している株式会社Combinatorさんでは、SaaSにおける最重要の課題として「解約率」について注意深くチェックしているそうです。

「SaaSにとって継続利用してもらうことが重要なので、解約率を最小化することは何より重要です。しかし、解約率を低減することにのみ目が行ってしまうと、契約期間満了タイミングの少し手前のお客様にサポートのウェイトを寄せてしまいがちです。本来は長く価値を感じていただくために解約を予防すべきなのに、目先の解約防止が「目的」になってしまいます。これでは対症療法にしかならないので、「絶対に解約しない成功条件」を定義し、未然に解約リスクを下げる必要があると考えています。」

そこで、石川さんは独自に「立ち上がり成功条件」と「解約リスクゼロ条件」を設定し、利用開始後3ヶ月まで追うKPIと、4ヶ月目以降で追うKPIを分けて考えるようにしたそうです。

「立ち上がり成功の定義」

  1. メール配信(3ヶ月で○回以上配信されている)
  2. スカウト発生数(3ヶ月で社員人数に対しての○%以上のスカウトが発生している)
  3. 応募発生数(3ヶ月で社員人数に対しての○%以上の応募者が発生している)

※上記条件のうち、全てが当てはまる状態が成功。

「解約リスクのある状態の定義」

  1. メール配信(1ヶ月空いてしまう)
  2. スカウト発生数(月間で社員人数に対しての○%以下のスカウトしか発生していない)
  3. 応募発生数(月間で社員人数に対しての○%以下の応募者しか発生していない)

※上記条件のうち、1件でも当てはまる状態。

↓イメージ。
CSの実績を可視化するようにしているそうです。

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結果として、解約率は目標の8%未満に対し、2.5%と目標を達成することができています。 問い合わせへの即レスは大前提としながらも、それだけでは解約を防げないケースもありました。ところが、上記のような基準を設けたことで解約前に様々な方策を試せるようになりました。

今後は、上記のような定量KPIとNPS®️を掛け合わせて顧客を分析し、解約の前兆をより精緻に見極めていきたいとのことでした。(例えばKPI達成中のお客様はNPS®️も高いかどうかなど)


CSの意義を客観的に示せない企業も多い中で、具体的な数値に落とし込むことでCSの意義を可視化している点が非常に印象的でした。

チームスピリットにおけるカスタマーサクセスの意義

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続いては、チームスピリット宮原さんの発表です。
テーマは、「チームスピリットにおけるカスタマーサクセスの意義」。

宮原一成 / 株式会社チームスピリット 執行役員 ソリューションセールス&サービスディビジョン


「勤怠管理」「経費精算」「工数管理」「社内SNS」などのワンストップサービス「TeamSpirit」を提供している株式会社チームスピリットさんでは、新規で獲得した売上と、解約によって失った売上の比率を重要視してチェックしているそうです。

カスタマーサクセス部署は「利活用の促進」と「Churn(解約)の最小化」がミッションとなっており、全社的に見ても様々な部署のハブ(中核)になっています。 f:id:h-omata:20170613174701j:plain

カスタマーサクセス部署の業務としては、大きく3つあります。お客様の利用年数や紹介率、活動履歴等を把握する“現状把握”、顧客企業に訪問したり、少人数制の個別相談会を行う“活用促進”、お客様が直面されている課題や問題を解決する”課題解決”です。これによって、解約リスクを事前に把握したり、アップセルの機会を作ることができています。(2017年7月13日には、ファン感謝Dayと題したイベントも開催するそうです。)


ProactiveなサポートとReactiveなサポートを掛け合わせて行っている点が印象的でした。

成長中サービスのカスタマーサクセス方法

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最後は、SmartHR高橋さんの発表です。
テーマは、「成長中サービスのカスタマーサクセス方法」。

高橋昌臣 / 株式会社SmartHR 執行役員 カスタマーサクセス


社会保険・雇用保険の手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア「SmartHR」を提供している株式会社SmartHRさんは、社内におけるカスタマーサクセス部署の立ち位置や具体的な活動について共有してくれました。

SmartHRでは、サービスローンチ3ヶ月目からカスタマーサクセス担当を採用しました。また、カスタマーサクセスチームはプロダクト開発部に所属していて、現在は4人のチームで4500社に対応しています。

カスタマーサクセスチームが大切にしていることは下記の5つです。 f:id:sennba3:20170614152355j:plain

これらを意識できているかは日々1 on 1で確認し、メンバー間で納得感を持って仕事に取り組めるようにしています。

問い合わせ対応は、「Intercom」を用いて行っており、初回回答時間は10分程度です。また、サポート実績をサイトで公開したり、問い合わせ内容を踏まえてリアルタイムにFAQを作成することもあります。 契約から半年を境に定期訪問やヒアリングを実施するようにし、普段問い合わせでは出てこないフィードバックを得るようにしています。

↓社内でのカスタマーサクセスの立ち位置はこのような感じだそうです。 f:id:sennba3:20170614152404j:plain カスタマーサクセス担当者は、開発会議や営業会議に参加して、UXについて意見したり、要サポートのユーザーについて情報共有を図るようにしているとのことです。

毎月400社ずつ顧客企業が増える成長中サービスの裏には、カスタマーサクセス部署のスケールしないことを実施する愚直な姿勢がありました。

懇親会

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各社の発表が終わり、懇親会が行われました。「BtoBのクラウドサービスにおけるサポート」に特化していることもあり、参加者同士会話も弾んでいる様子でした。ビールや軽食も用意されており、みなさん和やかな雰囲気で談笑していました。

まとめ

CtoCビジネスに特化したサポートイベントはありましたが、BtoBに特化したサポートイベントはあまりなかったように思います。 そういった中で今回のイベントは、BtoBのクラウドサービスにおけるカスタマーサクセス/サポートについて考え、学ぶことができる貴重な機会となりました。

CallConnect」を提供する筆者にとっても、BtoBのクラウドサービスを提供する各社の実践的なノウハウを知ることができ、非常に有意義なイベントとなりました。

カスタマーサクセスと言うと、イコール“能動的なサポート”といった認識を持つ方もいるでしょう。しかし、実際は顧客行動をデータに落とし込み、データに基づいた改善を指揮する職務であり、部署なのです。今回の登壇企業においても、データを元に企業活動を改善し、顧客を成功に導こうとする姿勢が顕著に見て取れました。

今後このようなイベントが定期的に開催されることによって、国内におけるカスタマーサクセスの正しい認識が広がり、顧客の成功を支援する企業が増えることを期待したいと思います。

主催者のHDE 渋江さんにお話を伺ったところ、今後も定期的に開催する予定とのことでしたので、今から「BtoB ThinK Customer Success Ver2」の開催を楽しみに待ちたいと思います。ご興味ある方はイベントページより主催者をフォローしておくといいでしょう。新規イベントのお知らせを受け取ることができます。

https://atnd.org/events/87966

以上、初開催となった「BtoB ThinK Customer Success Ver1」の参加レポートでした。