サポートタイムズ

サポートタイムズはカスタマーサポートの“今”を届けるメディアです。(Powered by CallConnect)

Twitter Facebook

「CS がプロダクトにもっと関わるには?」MICS #01 イベントレポート

f:id:sennba3:20190627130808p:plain

こんにちは。編集部の畠です。
本日は渋谷のSakura Cafe( 株式会社ディー・エヌ・エーの社内カフェスペース)にやって参りました。 さて、本日は CS (カスタマーサポート、サクセス)と、別のものを掛け合わせるイベント「MICS」の記念すべき第一回目が開かれます。東京や新潟、さらには沖縄から総勢40名が渋谷に集結しました。

MICS とは?

ユーザの声を反映させたモノづくりを追求するためのコミュニティ。

「エンジニアやマーケター、デザイナー、プロデューサー、そして経営層に至るまで、あらゆる職種と経験を、CSを通じてミックスしていきたい。様々な経験を持つ人たちの力を集めてサービスの品質をさらに高めていきたい」というコミュニティ設立の思いを株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)品質統括部部長の三村さんから発表いただきました。

f:id:sennba3:20190627123623j:plain

イベントスタート

今回は、風呂グラマーとしても有名なエンジニアの増井 雄一郎さんと、 DeNA の石黒 桃子さんがゲストとして登壇します。「CSがモノづくりにどう関わっていくと良いのか」というテーマでお話しいただきました。

CS がプロダクトをリードする世界

最初の登壇者は増井さんです。昨年まで飲食店の予約管理サービスを提供するトレタで CTO を務め、その後も様々なプロジェクトに関わってきました。

増井さんのこれまでのキャリアでは、プロダクトに1人目のエンジニアとして関わることが多かったそうです。
1人目のエンジニアはやることがたくさんあります。エンジニアとしてアプリケーションを作る以外に、運用やメンテナンス、プロダクトオーナーを兼ねて意思決定をしたり、サポートチームを作るといったこともやってきました。増井さん自身も、トレタのリリース直後はカスタマーサポート・サクセスも担当していました。

f:id:sennba3:20190627123545j:plain

「個を見る力」と「市場を見る力」

サービス開発の過程では、顧客との接点が多い CS が、開発部門に対して要望のチケットを投げることがよくあります。そこで問題となるのが、要望を出しても開発が進まないということです。
なぜこの問題が発生するかというと、ビジネス側は、企業が個々のユーザーに対してサービスを提供しているというより、大きな市場に対してサービスを提供していると考えているからです。
チケットで上がってくる要望一つ一つに対応するのは、顧客それぞれに対するアクションだと捉えられるため、重要ではあるもののもっと大きな市場の課題に取り組まなければいけないんだという論理になりがちです。結果として顧客からの要望が軽視されてしまうと増井さんは分析します。
しかし、実際は「個を見る力」と「市場を見る力」のどちらも重要なはずです。

グロースフェーズでは CS の「個を見る力」が重要になる

確かに0→1のフェーズで CS がプロダクトをリードするのは難しい。なぜなら、顧客が存在しないから。しかし、顧客が存在していて、グロースフェーズに入った場合は状況が変わります。例えば、顧客が想定外の使い方をしているためにサービスの価値が発揮できていない場合には、顧客の声を吸い上げて改善することが重要になります。

例えると、“早く移動したい”というインサイトに対して、馬ではなく車が生み出されました。そして、そのイノベーションの結果として車が世に出たのであれば、今度はアクセルを踏みやすい車が欲しいといった新たな要望がでてきます。市場を見ることも重要ですが、いずれは個を見てプロダクトを改善していくことが重要になってくると考えられます。そこに CS の人がもっと関わってほしいと増井さんは考えています。
実際にトレタのグロースフェーズには、CS担当者が新機能のリードやプロジェクトリードを務めていたこともあるそうです。

f:id:sennba3:20190627124534j:plain

CS がプロダクトをリードするためには?

では、実際に CS がプロダクトをリードしていくにはどうしたら良いのでしょうか。 CS は個をしっかり理解しています。その上で市場を理解できるようになれば、開発や経営の中にもっと入っていけると思います。

市場を意識すること

Aさんがサービスに対する要求を上げてきたとします。その時に単にAさんから要求が上がってきたと見るのか、メインターゲットである20代の女性から要求が上がってきたと捉えるのかでその後の行動が大きく変わります。
自社サービスのターゲットになり得る人は全国にどのくらいいるのか。そして、市場全体の中で自社のサービスがどんなポジションにいて、今後どこに向かっていくのか。このようなところまで深掘りしてみましょう。(例えばスマホやPCの利用状況に関する統計データは総務省の資料の中にあることが多い。)

CS は 普段は個々の課題を見ていますが、市場を意識し、経営者や開発に関わることで、より大きくプロダクトの成長に貢献できるはずです。

そして、そのためには ファクト を作るための環境整備も重要です。統計をとる際にも、ファクト を作りやすいように、カテゴライズの方法を工夫することで、より定量的なデータに落とし込むことができます。

個と市場を見る力を持ったチームが良いプロダクトを作る

個だけ見ていても市場は理解できない、逆に市場を見ている人には個が見えていない。両方の力を同じ人間が持つのは実際は難しいです。そのため、個を知っている CS は経営陣に積極的に関わっていくことが重要です。個と市場の両方をバランス良く見れるチームになれば、より良いプロダクトを作っていけると増井さんは考えています。

キャリアチェンジした私のCS譚

続いての登壇者は DeNA でオセロニアというゲームの CS を担当されている石黒さんです。 DeNA に入る前はゼネコンでセールスをしていたそうです。 DeNA 入社後、広告記事の制作進行やマーケティングを経て、現在は CS を担当しています。

f:id:sennba3:20190627123741j:plain

マーケティングの思考を活用

石黒さんは CS に部署異動した際、マーケティングの部署に比べると、業務の中で数字を強く意識する機会が少なくなったと感じました。そこでマーケティング担当時代の思考方法を活用しました。 すべての施策には、「ターゲットとコンセプトがある」ということをチームメンバーに説明し続けたそうです。

その結果、各施策のターゲットやコンセプトを CS メンバーも把握できるようになり、運営が追っている KPI への理解を深めることができました。

定性コメントの整理に挑戦

CS が普段の業務でマーケティングほど数字を意識するのは難しい、しかし SNS にある施策への反応をまとめることで、伝えやすい形に表現できると考えました。
開発や、マーケティング、分析のチームに赴き、定性コメントのレポートをつくることを提案したそうです。

Twitter で検索しても全然関係ないものがでてきたりや、5チャンネルなどまとまっていない中から、コメントを集めるのは大変でしたが、 KPI の裏に隠れているものが多く、思った以上に需要があったそうです。
(具体的には、施策に対するポジティブなものとネガティブなもの両方もってきて、分類します。さらに結果に対する考察、施策に対してプレイヤーがどう思っていたのかというのを抽出して渡したそうです。)
そうすることで、こういった意見が欲しいなどのリクエストがもらえるようになりました。

CS はお問い合わせ対応と思うこともあるかもしれないが、自分の足で動く継投力とか分析を力をつけて、マインドを浸透させてプロダクトに関われるようになっていきたいと石黒さんは考えています。

所感

CS はもっとプロダクトに関われる

顧客との接点が多い CS は、プロダクト開発の過程で重要な役割を果たすというのは、普段 CS 業務を行っている私も実感しています。
例えば、サービスページや FAQ で、普段ユーザーが使っている言葉を使うようにしたり、ターゲットのリテラシーを意識した表現を考えることができます。これも、普段ユーザーに接しているからこそできることです。
しかし、他部署に顧客からの要望などを伝える際には、定量データを用いるなど、伝えるための工夫が必要となり、そこが壁となっている現実もあるようでした。
増井さんはデータの見方の参考として「FACT FULNESS 」という書籍をオススメしていました。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログ (1件) を見る

CS は、顧客のインサイトを他部署にしっかりと伝えていくことができれば、もっと経営や開発の意思決定に関わっていけるんだということをイベントを通じて感じ取ることができました。

MICS は引き続き開催されるようですので、興味のある方は是非下記からメンバー登録をしてみてください。
以上、MICS #01 のイベントレポートをお届けしました。

mics.connpass.com