本記事では、ウェビナーが SaaS 企業の成長にどう貢献するかということについて考察します。海外の SaaS 企業では、ウェビナーの開催は当たり前になりつつあります。
ウェビナーは SaaS 企業の成長にどう貢献するか
1. トラクション獲得に繋がる
トラクションとは、成長する兆しのことを指します。SaaS 企業にとっては、ユーザー数や MRR (月次売上)がそれに当たります。 SaaS 企業は様々なチャネルを通してトラクションの獲得を目指します。例えば、SEO やメールマーケティング、パートナーシップ、展示会などです。 費用対効果のいいチャネル=顧客獲得に最も効率的なチャネルを早めに見つけることができれば、成長速度を早められるでしょう。
そういった中で、ウェビナーは効果的なトラクション獲得チャネルになり得えます。ターゲットとなる顧客が全国どこにいても、ウェブ上でセミナーを開催することで、製品情報などを効率的に届けることができます。オフラインで開催する場合は、会場費用や設営に手間がかかりますが、ウェビナーであればこれらの準備も最小限で済みます。少ないコストで、より多くのターゲット顧客にアプローチできるのです。
2. セールスサイクルが短くなる
見込み顧客が有料化するまでに長い期間がかかれば、その分人的コストもかかるでしょう。これでは、収益性が悪化し、成長を妨げてしまいます。そこで、SaaS 企業は導入前の疑問点を解消するために 1on1 のミーティングを設定し、セールスサイクルを少しでも短くしようと取り組みます。
しかし、1on1 でのミーティングは手厚い対応なだけに手間も多くかかり、スケールアップするのが難しいと言えるでしょう。そんな時にウェビナーを活用すれば、一度に多くの顧客を相手にすることができます。運営コストも 1on1 ミーティングに比べると低くなります。加えて、ウェビナー開催中に参加者と運営側の質疑応答をその他の参加者達が見聞きすることで、より深い製品理解が得られるメリットもあります。
3. チャーンを防ぐ
チャーンとは、解約を指します。継続的に利用してもらうことが大切な SaaS にとって、チャーンは最大の敵とも言えるでしょう。チャーンの理由は様々ですが、製品の本来の活用方法を知らないということが理由となって、チャーンが発生することもあります。
解約を決める前に必要な情報を届けられるかどうかが重要です。 ウェビナーを定期開催し、情報を届ける機会を増やすことで、製品に対する理解不足が原因のチャーンを防ぐことができるでしょう。
4. カスタマーサクセスを実現する
顧客が抱える課題を正しく解決できているかどうかは、製品の利用継続率のみならず、口コミの起こりやすさにも大きな影響を与えるでしょう。そこで、多くの SaaS 企業ではユーザーの利用状況をモニタリングしたりすることで、顧客を成功させられるように取り組みます。チャーン防止と近い部分もありますが、顧客が製品の活用方法を正しく理解している状態を作ることが重要です。製品の価値を実感することができれば、継続的な利用に繋がります。
また、ウェビナーを通して企業担当者との接点が増えれば、心理的な結びつきも強まるでしょう。このような繋がりができることで、製品に対する愛着度、信頼度も高まり、口コミが起きやすい状態も作れるはずです。
5. アップセル、クロスセルの機会を作る
SaaS を成長させる上では、適切なタイミングで上位プランの利用を勧めたり、利用人数を増やしてもらう働きかけ(アップセル)が重要です。もしくは、自社の別の製品を使ってもらうことで、1社あたりから得られる収益を最大化する働きかけ(クロスセル)も重要となります。
そういった中で、ウェビナーは効果的なアプローチ方法となるでしょう。製品デモや顧客トレーニングだけを開催目的にせず、Aプランを利用中の顧客に対して、より便利に使えるBプランを紹介する(アップセルやクロスセル)目的で開催するのです。セミナー形式になるため、参加するかどうかは顧客の自主性が尊重されます。1on1のやりとりに比べ、参加者も気軽に関連情報に耳を傾けられるのではないでしょうか。
ウェビナーは、顧客とのより良い関係を作る上でも役立ちます。顧客が遠方にいるがゆえに関わり合いが薄くなっていたとしても、ウェブ上で接点を持つことができます。企業にとっても、スケールアップ可能な顧客アプローチ方法として機能するでしょう。ウェビナーを有効活用できるかどうかによって、SaaS ビジネスの成長速度も変わってくるでしょう。
海外企業のウェビナー事例
国内に比べてウェビナーの開催が一般的な海外 SaaS の事例を見てみましょう。国土の広いアメリカでは、特定のセミナー会場に足を運ぶというのが物理的にも難しいことなどから、ウェビナーが一般的になっているのかもしれません。
・Salesforce
SaaSの王者と言われる「Salesforce」においても、ウェビナーが定期開催されています。
・Intercom
国内でもスタートアップを中心に利用している企業も増えつつあるメッセージングプラットフォームの「Intercom」でも、ウェビナーページが用意してあります。
・Zendesk
カスタマーサポートツール「Zendesk」においても、ウェビナーが定期開催されています。
その他にも、海外のSaaS企業においてはウェビナーの開催が一般的になっています。
New HR, Payroll, Healthcare, & Benefits Webinars | Zenefits
おわりに
いかがでしたか。急成長を遂げている SaaS 企業の多くが、ウェビナーを開催し、ビジネスの成長に繋げています。オフラインイベントに比べて、ウェビナーは会場費用や設営コストをあまりかけずに、より多くの顧客にアプローチすることが可能です。
まずは小さく始めてみましょう。 製品紹介や顧客トレーニングのウェビナーを30分くらいから始め、開催の流れを理解しましょう。参加者をどう集めるかというはまた別の課題にはなりますが、小さく手軽に始められるというのがウェビナーの良さでもあります。
SaaS 企業においてウェビナーが果たす役割の大きさをお分りいただけたのではないでしょうか。