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「エンジニア向け SaaS の サクセス方法とは?」カスタマーサクセスナイト vol.3 イベントレポート

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本日は渋谷にある株式会社グッドパッチまでやって参りました。
第3回目となるカスタマーサクセスナイトが開催されます。

今回はエンジニア向けに SaaS を提供している企業の担当者が、カスタマーサポート特有の悩みやサクセスの事例を発表してくれます。

さらに今回は海外からのゲストとして、 Stripe 社のサポートエクスペリエンスのベンさんも登壇されるということで、海外企業での取り組みが生で聞ける貴重なイベントになりました。

カスタマーサクセスナイトとは?
カスタマーサクセスのノウハウ・悩みを共有し、日本でのカスタマーサクセス職の認知を広げることを目的としたコミュニティ。

イベントスタート

最初の登壇者は、株式会社グッドパッチの板倉さん。

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板倉さんはエンジニア経験もあり、現在はグッドパッチのカスタマーサクセスチームで Balto というエンジニア向けサービスを担当しています。
Balto は、スクリーンショットやムービーによるデザインのフィードバックツールで、元々は社内のニーズから生まれたそうです。

お問い合わせの発生ポイントは?

サービスの特性上 SDK をインストールする必要があるため、そこでエンジニアの力が必要になり、つまづきのポイントになってしまっています。

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すぐにお客様の課題を解決できる方が良い!ということで、チャネルはリアルタイムのチャットサポートとヘルプセンターのドキュメントで対応しています。 チャットツールは Intercom 、ヘルプセンターは HelpScout を使用中です。 チャットサポートでは、導入につまづいている傾向を検知したら、サポート担当者側からコンタクトを取る場合もあります。

エンジニアやデザイナーが回答することも

デザイナーやエンジニア、プロジェクトマネージャーも Intercom のアカウントを持っていて、直接問い合わせに対応することもあります。チームとしてプロダクトを作るという意識を共有しているので、基本はCSが対応しますが、状況によってはエンジニアが回答することもあります。

利用者ごとに入り口を分けたヘルプ

利用者のニーズを想定して、開発者向けのページとレビュアーのページを分けています。 エンジニア向けページではエンジニアが読みやすい記述をしながらも、エンジニア以外の人が読んでも理解できる言葉遣いで記事を作成するように意識しています。記事のリリース前には、 Balto チーム以外のエンジニアやメンバーにもレビューしてもらうようにしています。

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板倉さんの発表資料はこちらからご覧いただけます。

エンジニア出身だからこそのサポートのこだわり

続いての登壇者は、はてなの井上さん。

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Mackerel というエンジニア向けサーバー監視ツールのセールスエンジニアという肩書ですが、カスタマーサポートからセミナーのオーガナイザー、ヘルプなどのドキュメント作成まで幅広く対応しています。

Mackerel ではサービスの画面にフィードバックのボタンがあるため、そこからお問い合わせがくるようになっています。内容としては、以下のようなお問い合わせがくるようです。

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インフラエンジニアやSRE、WEBオペレーションエンジニアの方達から問い合わせが寄せられるケースが多いとのこと。
基本的に困っているときにお問い合わせをいただく場合が多いため、早い返答を心がけています。

また、技術的な質問も多く、冷静さが重要だと感じています。お客さまの環境や、目的は何なのかといった前提条件をクリアにしつつ、問題を切り分けていく必要があるからです。ネガティブな意見や問い合わせを受けることも時にはありますが、多くのお客様に便利に使っていただいているという事実がありますので、落ち込まず、お客様と一緒により良いサービスにしていこうという気持ちを持つようにしています。

そして、お客様の言うことは鵜呑みにしない、ただ意見を聞いてそのまま開発するだけではSaaSとしての汎用性や柔軟性が失われる可能性もあるからです。

エンジニアとしてのこだわり

技術的に”イケてない回答はしたくない”です。
イケてない回答をしないためにも、技術的な事柄に対する理解力が不可欠です。そこで、自分でも実際にサーバー運用をしてみたり、社内の技術勉強会に参加して知見を深めるようにしています。

また、相手は「お客様」ではありますが、その前に「エンジニア同士」という意識が私の中にあります。そのため、できないことはできないと伝え、こういう方法ならできるという“提案”をするように心がけています。

Mackerel のCSで大変なことは?

エンジニア向けツールなので、一定以上の技術力が求められます。また、お客さまの技術も日々向上していくので、それに食らいついていく必要があります。
私自身エンジニアでもあるので、お客様の成長はとても刺激になり、お客さまに自身の成長を引っ張ってもらっている意識で対応しています。

今後は、継続率を高められているかどうかといった点についても数値化していきたいとのことでした。 井上さんの発表資料はこちらからご覧いただけます。

スケールしないことを大切に

最後に緊急来日した Stripe のベン・バトラーさん。 テーマはカスタマーサクセス。普段のプロジェクトの話をしていただけるそうです。

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カスタマーサクセスはお客さまのサクセスを確保することですよね。サービスに登録してもらうとか、料金を払っていただくことだけではなくて、ビジネスをサクセスさせることが大事だと思います。もちろん、どんなビジネスにおいてもですが、SaaSにおいては特に大事だと思います。

サービス以上にカスタマーサクセスに焦点を

従来のカスタマーサポートでは、説明書の最後に記載された電話窓口に電話をかけた挙句、何時間も待たされ、たらい回しにされるということもありました。企業によってはサポートはコストセンターという見方もありますが、いまの時代においてはサービス以上に焦点を充てるべきところだと思います。

CEOのパトリックも、「できるだけ早い段階でプロダクト以上に“サポート”に注力すべき」だと言っています。 例えば、この場に創業者のジョンとパトリックがいて、隣にストライプを使いたい人がいれば、その人の隣に座って説明するだけではなく、実装まで手伝うと思います。

創業者の2人はかつてポケベルを持っていました。 API の仕組みに不具合が発生すると、そのポケベルに通知が届くようになっていました。毎日連続してポケベルがなって、バグを直していた時期もありました。 Stripe も大きくなり、ユーザーも増えてきたのですが、いまでもスケールしないことをやっています。

ユーザーのサクセスに紐づいた料金体系を

ソフトウェア企業はユーザーのサクセスに紐づいた料金体系を設計しましょう。Stripe もユーザーのサクセスに直接紐付いた料金体系となっています。ユーザーのサービスが成長しないと、Stripe も大きな収益を得ることができず、成長しません。カスタマーサクセスは Stripe にとって本質であり、他のサービスにとってもそうであると思います。

所感

今回 SaaS を提供している3社が登壇しましたが、それぞれのサービスごとにカスタマーサクセスの形がありました。 日本のサポート業界においてカスタマーサクセスは比較的新しい考え方であるため、どうしたら顧客を成功させられるかということを企業ごとに試行錯誤していく必要があると感じました。 日本ではまだまだカスタマーサクセスという言葉や事例が共有される機会も少ないのが現状です。そういった状況の中で、カスタマーサクセスについて試行錯誤している企業がアイデアや事例を持ち寄った今回のイベントは非常に貴重だったと思います。
カスタマーサクセスナイトは不定期開催のようですが、興味のある方はグループに登録してみてはいかがでしょうか。

以上、カスタマーサクセスナイト vol.3のイベントレポートでした。