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安心安全を支える健全化業務って? CS JAM #8 イベントレポート

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最近ではサービス開発においてUI/UXという言葉が浸透し、利用者の使い勝手を考えたサービスが多く生まれている。
しかし、サービスの使い勝手をいくら向上させたところで、ユーザーが利用規約を守らず、トラブルを起こしてしまえば、安心してサービスを利用することはできない。

健全化業務の重要性

とりわけ個人間のマッチングサービスにおいては、ユーザー間の摩擦や些細な認識の違いによって思わぬ揉め事に発展することもある。また、悪意のある業者を野放しにしてしまえば、ユーザーが詐欺などの被害に遭い、サービス全体の信頼性を大きく損なうことになる。
ユーザーの”安心安全”を守ることは、より良いサービス運営には欠かせないことだ。しかしながら、ユーザーの“安心安全”を守るためにどんな活動が行われているかはあまり知られていない。

TOKYO CS JAM #8では、「メルカリ」や「pairs」のサポート担当者が サービスの健全化のために実際にどんな業務を行っているのか、具体的な内容とその意義を聞くことができた。

ただ取り締まるのではなく、なぜ?を伝える。

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稲葉 俊允
株式会社メルカリ/CSグループ Risk&Moderation

2014年7月にRisk&Moderationチームの立ち上げメンバーとしてメルカリに参画。不正利用対策ユニットのリーダーを担当し、現在はオペレーション、業務改善、施策進行、数値管理等【何でもやりますユニット】のメンバーとしてサービスの健全化維持のために日々奮闘中。


トップバッターは、メルカリの稲葉さん。
メルカリのサポートチームは大きく2つに分かれているそうだ。
1つは、ユーザーからのお問い合わせに対応する、”CX(カスタマー・エクスペリエンス)”というチーム。
もう1つは、投稿された文章や出品された商品の中に法律や規約に抵触するものがないかをチェックする、”RM(リスク&モデレーション)”というチーム。

今回は”RM”で具体的に行っている施策やその背景を語ってくれた。

健全化業務をしなかったらどうなるの?

サービスは使うユーザーがいて成り立つもの。だから、安心安全に使ってもらえるのが大前提で、サービスの成長のためにRMが存在している。 もしRMがなければ、違反やトラブルの元となる出品や不適切な投稿が野放しになってしまう。「禁止してるのになぜ削除しないんだ」とか、「不適切なコメントがあるのになぜ何もしてくれないんだ」という不快な思いをユーザーにさせてしまうことになる。金銭的な被害や精神的な被害を与えてしまう可能性だってある。
また、信用を失えば、会社の成長スピードに影響を与えかねない、もしくは成長を止めてしまう可能性すらある。

理解を促す。

違反商品を見つけたら、迅速にコンタクトを取るようにしている。悪意を持って出品している人は自覚があるが、人によっては知らない間に利用規約を破ってしまう事だってある。「なぜ、だめだったのか?」「なぜ、遠慮してもらうべきか?」がユーザーに伝わらないと、ユーザーは「なぜ投稿が消されたのか?」を理解できず、同じことをもう1度やってしまう。

啓蒙活動も仕事の一環。

不適切な投稿の取り締りはもちろん、利用規約の啓蒙活動までを行う。どうやったらもっと利用規約を理解してもらえるか、日々試行錯誤している。

安心安全な恋愛・婚活のために、毎日7万件の投稿を監視。

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安信 竜馬
エウレカ/CSグループ

大学卒業後、テレマーケティング会社を経て、主に外資系メーカーや小売業にてCS部門の立ち上げ・インハウス化・アウトソーシング化を含めたマネジメントを経験。2016年2月、エウレカに入社。恋愛・婚活マッチングサービス『pairs』のCS部門責任者として、チームの立ち上げ・育成に従事している。 ・恋愛・婚活マッチングサービス『pairs』 https://www.pairs.lv/ ・カップル向けコミュニケーションアプリ『Couples』 https://couples.lv/



続いて450万人の会員を抱えるpairsのサポートマネージャーを務める安信さんのお話。

安心安全な恋愛・婚活を行える環境のため、すべての投稿をチェック

安信さんが所属するカスタマーケアというセクションでやっているのは、大きく分けて2つ。
1つは、メールによる問い合わせへの対応。台湾と日本で合わせて1日300本ほど。
もう1つは、投稿監視によるユーザーサポート。1日約70,000件もの投稿があり、常に監視している。2割を社内、残りの8割は外注で対応している。

本来の目的外のユーザーを排除

pairsは恋愛・婚活のためのみのアプリ。それ以外の目的で利用する人を排除する必要がある。

アメリカではマッチングサービスが浸透していて、結婚する人の3〜4割がそういったサービスを利用しているのが実態。しかし、日本ではまだ掲示板のような認識でいる人が多い。“知り合いの紹介”や“合コン”と並ぶような選択肢として“婚活アプリ”が市民権を得られるのを目指している。

安心安全な恋愛・婚活を行える環境を提供するためにすべての投稿をチェックしている。

pairsでは安心安全なサービスを提供するため、具体的には下記のような取り組みを行っている。
・メッセージのやり取りを開始する前に必ず「年齢認証」
・24時間365日の投稿監視体制
・パトロールによる目的外利用者の排除
・各種フィルタリングによるアラート運用
・警察庁情報技術犯罪対策課との連携
・ユーザー間トラブルによる違反報告の対応
・違反傾向の分析に基づく目的外利用者の判定基準の見直し

例えば、恋愛のパートナーを探すシーンで使うべきでない言葉が使われていることがある。その場合に、フィルタリングによるアラート運用の一環として、メッセージを投稿しようとすると承認されずにアラートが出るように対策している。
また、出会い系サービスの問題として、悪意のある業者や個人の参入がある。
そこで、本人の画像ではなく芸能人の画像をアップする人など、問題行動を起こす人の特徴を定期的に洗い出し、違反を見逃さないように対策している。

やりがいはどこにあるか?

健全化業務は、正義感や責任感を前提とした仕事である。一般的なコールセンターや問い合わせ対応とは全く違う観点の仕事であり、そういった事に携われていることに面白さがある。また、1つ1つの取引が健全に終わっていくことが嬉しい。(稲葉さん)

違反報告があったら、事実確認や利用規約との照らし合わせで最終的な判断をする。人対人のサービスであるため、事実が見えなかったり、被害妄想のようなものも存在し、一筋縄でいかないところがやりがいでもある。(安信さん)

所感

数あるサービスの中でも、特に多くのユーザーを抱え、多くの問題に対処してきたであろう「メルカリ」と「pairs」。
アラート運用や監視体制の強化など、サービスを健全に保つためにまずは「サービスの仕組み」から改善してきたようだ。 また、“ユーザー同士の言い分が違う”など、事実がはっきりしない場合にどう落としどころをつけるかといったことが非常に難しいと感じた。仕組みだけで解決しきれない部分は、サービスの方針や一般常識、良心など、様々な基準に照らし合わせて判断する必要があるようだ。
継続的に利用されるサービスになるためには、健全化業務はこの上なく重要である。しかしながら、そのサービスの健全さを支えている人達の努力は見えにくく、スポットライトが当たることもそこまで多くないように思う。そんな中、稲葉さん、安信さんが信念を持って健全化業務に取り組む姿勢は非常に印象的で、有名サービスの成長を力強く支えるサポートの誇りを感じた。