本記事では、「靴を売ることになった顧客サービス企業」と称されるザッポスのカスタマーサービス事例を参考に、カスタマーサービスがどう企業のブランディングにつながっていくのかということについて、考察を書きました。
ブランディングとは何か?
ブランディングとは、「あなたは誰なのか?」、「あなたは何をしているのか?」、「あなたが他人と違うところ、対象とするマーケットにどんな価値を提供するのか」ということを知ってもらい、対象者の意思決定に影響を及ぼすように価値を伝達していく活動といえるでしょう。
正しくブランディングすることができれば、企業の名前や製品の良さなどは周知のこととなり、仕事や製品への申し込みがどんどん舞い込んでくるようになるのも夢ではありません。また、信頼性の向上にもつながり、有益な人々を惹きつけます。
カスタマーサービスによるブランディングとは?
カスタマーサービスによるブランディングとは、「顧客からの問い合わせを自社のブランディング機会として捉え、1分ないし5分の間顧客の注意が向けられているときにより良い顧客体験を提供する」ということです。
企業が顧客の注意を数分間得るには、それ相応の努力が必要です。 しかし、特に電話で顧客からの問い合わせがあった場合は数分間こちらへ注意を向けてもらうことは容易です。
つまり、この時間をブランディングの機会として捉え、顧客の疑問を解決し、より良い顧客体験を提供していくことが企業のブランディングになるという考え方です。ここでの顧客体験が良いものであれば、きっとその顧客は友人へもその企業をお勧めしてくれることでしょう。
ザッポスの考え方、事例
ザッポスには、広告にはほとんど費用をかけず、その費用をカスタマーサービスに投資し、顧客に口コミでマーケティングを担ってもらおうという哲学があります。そのため、たいていは何回かリンク先をクリックしないと問い合わせ先が見つからないサイトが多いですが、ザッポスではサイトの一番上に電話番号を掲載しています。
コールセンターは年中無休24時間体制であるのはもちろんのこと、なかなか商品を決められない顧客のために365日返品可能という規定も設けています。
さらに、在庫にない靴を探している顧客から電話があった場合には、どのオペレーターも競業他社を少なくとも3社調べ、在庫を見つけた場合は顧客に他社のサイトを教えるように教育しているそうです。 短期的に見れば、売上を失うことになりますが、ザッポスでは電話に一本ずつ対応して、顧客一人一人と一生涯続く関係を築こうと取り組んでいるとのことです。
まとめ
ブランディングというと、広告に何百、何千万円とかけて大企業が行うイメージでしたが、規模に関わらず出来ることがありました。それは、日々顧客から寄せられる問い合わせの電話やメールへしっかりと対応していくことです。当たり前のことといえば当たり前のことです。しかし、この当たり前のことを徹底して、情熱を傾けてやっている企業はどのくらいあるのでしょうか?
問い合わせが来たタイミングは顧客と話す絶好の機会です。その機会を活用し、顧客に対して親切な対応をすることで、記憶に残る良い思い出を提供することは今日から始められるブランディングといえるでしょう。 カスタマーサービスをたんに顧客からの質問に回答するものとたかをくくるのではなく、企業のブランディング戦略のひとつとして位置付け、会社をあげて積極的に取り組んでいく必要性を感じます。
「あなたは誰なのか?」、「あなたは何をしているのか?」、「あなたが他人と違うところ、対象とするマーケットにどんな価値を提供するのか」ということを顧客に伝えるには、カスタマーサービスに力を入れることから始めてみるのもいいかもしれません。