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カスタマーサポートを盛り上げたい。エバンジェリスト 藤本大輔の CS への想い

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自らを「カスタマーサポートエバンジェリスト」と名乗り、カスタマーサポート(CS)業界を盛り上げるために様々な活動されている藤本大輔さん。 今回はそんな藤本さんに、CS への想いや CS 業界の課題や展望についてお話を伺ってきました。

藤本さんの経歴を簡単に教えてください。

ファーストキャリアは、福岡の業務委託のコールセンターです。トータルで10年くらい在籍して、最後の1年で新規のプロジェクトがあり、福岡から東京に来ました。そのプロジェクトが終わったタイミングで、東京のゲーム会社のカスタマーサポート(CS)に転職しました。
その後フリマアプリの CS を経て、現在はプログラミングのオンラインスクール事業を手掛けるコードキャンプで、 CS のマネジメントや企画などを担当しています。
そして、会社の活動とは別に個人で「CS HACK」という CS 業界を盛り上げるためのイベントを毎月開催しています。その他にも AIチャットbot開発を手掛ける企業の顧問やコミュニティ作りの支援もしています。

カスタマーサポートエバンジェリストと名乗ったきっかけ

CS HACK をやり始めた理由にも繋がるのですが、前々からカスタマーサポートの良さを広めていきたいと思っていました。広めるためには、まずは関心を持ってもらわないといけないというところがあり、みんなに関心をもってもらうにはどうしたら良いんだろう?と考えていました。そんな時に、私が「エバンジェリスト」と名乗ってしまえば、周囲の興味を引くことができるのはないかと思い、名乗ることにしました。

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普段の活動内容は?

CS や UX などのスペシャリストをお呼びして、知見を共有いただく CS HACK をこれまでに28回開催してきました。(2019年4月5日時点)
また、CS HACK に関連して、朝活として SQL という言語を学ぶイベント「アサメシマエ」や、少人数でフレンチを食べにいく企画も行っています。

朝活なんて面白いですね、何でそんなことまでやっているんですか?

今後 CS の仕事は大きく2つに分かれると考えています。デジタルマーケティング寄りの方向性を伸ばすか、顧客の体験(UX)改善の方向性を伸ばすかです。
SQL が書けると、データを自分で取り出せることができるようになるので、前者のようなキャリア形成に役立てるのではと思っています。イベントを朝開催にしたのは、家庭の環境などで夜は来れないという方を意識したからです。実際にやってみたら、 CS HACK は行けないけれど、朝活には来てくれるような方もいらっしゃいました。

CS という仕事を“問い合わせ対応の仕事”と捉える人が一般的に多いかと思います。しかし、私は“問題解決の仕事”だと捉えていて、メールやチャット・電話といった手段を用いて問題解決するのが CS の仕事です。そして、その問題解決の手段として、顧客体験を上流から設計する、あるいはユーザー行動をトラッキングしてデータを元に適切なアプローチ方法を策定するというのが後者の方向性です。

私自身も AI のチャットbot開発に関わっていますが、やはりメールやチャットで単純な問い合わせに返信する仕事は減っていくと思います。また、コールセンターがなくなるとは思わないですが、音声認識などの技術によって電話対応も自動化されていくのではないでしょうか。 そういった中で、これからの CS はユーザーがどこに不満を抱えているかということをより深く探ったり、企業や経営者が事業を通して社会に伝えたい思いを意識して仕事をしていくことが重要だと考えています。

CS の良さを広めたい理由

圧倒的に CS が好きだからですよ!

CS は唯一無二の存在である。

日々ユーザーと接していて、ユーザーに一番近い立場にいるのは CS だと思います。かつ自社でサービスを作っているのであれば、開発の人達も身近にいるわけです。ユーザーのことだけでなく、自社プロダクトの良さも分かっている職種って他にないんじゃないでしょうか。エンジニアはプロダクトの開発を日々していますが、直接ユーザーと接する機会はそこまで多くはないと思います。 CS はどちらの意見もわかる唯一無二の存在という捉え方もできますよね。 CS の良さをもっといろんな方に知ってほしいです。

なぜ1人で続けてこられたのか

実は前職でも CS のイベントを会社主催でやっていました。でも、それは人材採用といった会社側の狙いもあって開催されていました。私としても良い人材に来てほしいという側面もあったんですが、やはり「業界を盛り上げたい」という想いの方が強かったんです。会社主催にすると、例えば採用/商品PR等、何かしら引っ張られてしまう部分があると感じたので、次やる時は個人でやろうと思いました。周囲から色々な意見もいただいたんですが、私としては「この時にこの人達を呼びたい」といった自分のこだわりを大事にしたかったので、1人でやろうと決めました。

地方のコールセンターでの経験が糧に。

コールセンターあるあるですが、大規模な受託系のコールセンターには基本的に私物の鞄をオフィスに持ち込めません。財布等の私物は透明な袋に入れて管理される、当然携帯電話も持ち込めないのでロッカーに全部入れてちょっとしたやりとりもできない、何かあれば許可を得るための書類を書いたりなど、行動のすべてが管理されます。200人、300人を統制しないと業務が進まないという事情は頭で理解できていても、今思うとすごい環境だったと思います。ただそこに10年近くいたせいか、それが普通なんだ!と思っていたんですよね。
でも、東京に来て「こんな仕事の世界観があるんだ」と衝撃を受けましたね。コールセンターで働いているときはそのビルだけで仕事が完結しているような世界だったので、東京のように勉強会があるわけでもなく、企業同士でつながることもありませんでした。東京に来て、いろんな仕事のやり方があるし、様々な考えがあることに気がつきました。でも、そんな環境で何もせずにただ過ごすだけであれば、結局何も変わらない。東京に来たのも、代わり映えしない状況から変化を求めてきているので、自分から行動していこうと決めました。東京には様々な企業が集まっていて、面白い人や実績を残されている方がたくさんいるので、自分から行動していかないともったいないなと思ったんですよね。そんな経験が現在の活動につながっています。

そして、やるからには続けることが一番大事だと思います。毎月開催して大変だねって言われることもあるんですが、3ヶ月に1回とかだと、一旦落ち着いてしまったテンションを上げるのが大変で続けられなくなるんじゃないかという不安がありました。なので、毎月やると決め、来月もやんなきゃいけないんだという暗示を自分にかけるようにしました。そうやって毎月続けていたら習慣になって、これまで続けてくることができました。今は4月ですが、5月の内容はもう決まっていて、6月の登壇打診も進めつつ、7月はどうするかみたいなことを考えたりしています。
現在はイベント準備や受付などを手伝ってくれる人がいるのですが、それでも大変ではありますね。

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それでもよく続けてこられましたね?

私のクレカの上限が大変な時もありました。最初はイベントの参加費を無料でやってたんですよ。毎月1、2万くらいだったら自分の小遣いの中でもやっていけるかなと思っていたんですが、「料理もちゃんとしたのを出したい」とか、「Instagram用のパネルも作りたい」と盛り上がって作ったりして、どんどんお財布を圧迫していきました。3回目では100人集まったのですが、料理も出しましたからね(笑)。 今考えると、なんであんなことしたんだとろうと思うくらいです(笑) 。

続けることが希少価値になる。

新しいことを始める人って少ないし、それを続ける人はさらに少ないと思います。自分の価値を高める上では、何かを継続するのがとても大切で、それが希少価値になります。
続けていくうちに、企業の顧問だったり、イベントに呼ばれるなど、有り難いお話をいただけるようになりました。最初は企業が主催している CS イベントをベンチマークしていたのですが、業界を盛り上げるという点でみんな仲間なんだという意識に変わってきました。なので、CS HACK やその他の企業が開催する CS イベントを通じて CS 業界を活性化して、もっと知見を共有しやすい業界にしたいです。そして、この業界を目指す人を増やしていきたいですね。CS HACK でよく言っているのが、「CS を新卒の希望職種 No.1 にする」ということです。 CS の良さを知ってもらって、 CS って格好良いよねというイメージが醸成され、エース級の人材が増えていくような業界にしたいと考えています。

参加者の声が励みになった。

イベントに来る方々は大規模のコンタクトセンターで働いているというよりは、ベンチャー企業などの少人数のチームで働いているという場合が多いです。CS 担当者が1人、2人という体制で、社内に相談できる人がいないという状況も多いようです。そんな方々にとって CS HACK が情報交換できる場所となって、参加者の方々から「同じ悩みを共有できて良かった」といった声を聞くと素直に嬉しいですね。

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CS HACK #4の様子

CS 業界の変化と課題

カスタマーサポート以上にカスタマーサクセスの伸びがすごいですね。 SaaS が台頭する中でユーザーに継続して使ってもらうことの重要性が認知されて、カスタマーサクセスに注目が集まっているといった感じです。今まではセールスへの比重が大きかったかと思いますが、最近ではカスタマーサクセスにかける比重が大きくなっているように思います。
先日、イベント情報サービスの connpass のイベント開催件数を調査してみましたが、2016年、2017年前半はあまりカスタマーサポートやカスタマーサクセスのイベントは開かれていませんでした。しかし、2017年後半頃から急に増えてきていることがわかり、業界としての盛り上がりをデータからも感じられました。

また、メルカリの山田さんや GMO 宇賀神さん、iCARE 冨樫さん、 Pairs 安信さんなど 、CS を担当していた方が経営幹部になるような動きもここ数年の間にありました。役職に就くのは当然その方の実力だと思うのですが、そういう方々が増えて、カスタマーサポートでも責任のある役職を掴めるということが若い CS 担当者にも伝わっていくと良いなと思っています。

課題は?

業界全体でのブランディング

CS の課題として、CS の価値を経営者にどう知ってもらうかというものがあります。 CS にもお金や人のリソースをもっと投資してもらう必要があり、そのために経営層にしっかり CS の重要性を理解してもらう必要があります。
テレビ CM ではそれ自体がブランディングされているので正確な費用対効果が出なかったとしても、良いものだろうという前提で検討されることがありますが、 CS はまだまだそこまでいっていないかと思います。
もちろん、事業への貢献度を CS も数値で示していくことは重要です。しかしながら、 SaaS のように LTV がこれくらい伸びていますみたいなことで示しやすいケースもあれば、単発、例えば EC でサポートしたことによって、売上がどのくらい伸びたのかをリアルな数値で出すのが難しいケースもあるのです。
CS HACK にマネージャーの方や執行役員の方もいらしゃるのですが、さらにその上の方に対して CS を改善することによって経営に貢献できるというのを ”数字以外の面でも” 感じてもらうのが大事だと思っています。

事例の少なさ

あとは、サポート関係の事例ってまだそんなに出てきていないですよね。エンジニアやデザイナーほど知見が共有されていません。
もちろん CS 業界の特徴として、表に出しづらい情報もあります。CS は問い合わせ件数とかも表に出さなかったり、保守的な部分があるように感じます。特にIT業界でエンジニアやデザイナーは、自分達の知見をどんどん表に出して、業界を盛り上げようという意識がありますが、CS はまだまだそういった意識や横のつながりが弱いと思います。

ありがとうございました。藤本さんの今後の活躍に期待しています。

おわりに

今回は、「カスタマーサポートエバンジェリスト」の藤本大輔さんにお話を伺いました。今後もCS関連のイベントを定期開催していくようですので、本メディアでも藤本さんの取り組みに注目していきたいと思います。
各社のカスタマーサクセスの施策を LT で発表し合う CS HACK のイベント、天下一武闘会 (2019年5月22日) でも藤本さんが司会をされるそうなので、 CS HACK やカスタマーサポート・カスタマーサクセスに興味のある方は是非覗いてみてはいかがでしょうか。

cshack.connpass.com