次世代のコールセンターとして、いま WebRTC が注目されています。WebRTC によって顧客体験はどう変わるのでしょうか。CRM Forum 2016 レポート第2弾です。
テクマトリックス CRM FORUM 2016 の基調講演である顧客感動についてのレポートを前回の記事にてまとめました。
今回は個別の講演の中から技術的な新しいトレンドになりつつある WebRTC の動向についてレポートします。
WebRTC とは
WebRTC とは Wikipedia によると、以下のような説明となります。
WebRTC (Web Real-Time Communication)とはWorld Wide Web Consortium (W3C)が提唱するリアルタイムコミュニケーション用のAPIの定義で、プラグイン無しでウェブブラウザ間のボイスチャット、ビデオチャット、ファイル共有ができる。
つまりコールセンターにおいて言えば、今までは電話するのに「電話機」や「電話回線」が必要だったものが、全てブラウザ(InternetExplore や GoogleChrome など)でボイスチャットとして電話ができるようになるのが WebRTC です。近頃までは InternetExplore の古いバージョンが WebRTC に対応していなかったこともあり、日本での実用化には時間がかかると思われていましたが、先日の IEサポート終了により、 WebRTC が利用できる環境が整ってきました。
CRM FORUM 2016 でも WebRTC をテーマーにした講演が幾つかあり、コールセンターの新しいトレンドとして注目されていました。
WebRTC でカスタマーサポートはどのように変わるか
WebRTC によって「オムニチャネル」の実現が可能となります。オムニチャネルとは、メール・問い合わせフォーム・SNS・電話などあらゆるチャネルを統合してカスタマーサポートを実現することを指します。
電話だけは今までどうしても Web とつなげることが困難でした。そのため、実際の電話は電話機で対応し、顧客情報だけをPCで表示するなどの対応が取られていました。これが従来の CTI (Computer Telephony Integration) と呼ばれる技術です。WebRTC を使えば、電話そのものもブラウザで実現できるため、完全にオムニチャネルとして電話を組み込むことが可能です。
お客様からの電話で「先日送った問い合わせフォームからの返信がこなかったのだが。」という連絡があった時、どんな内容でどんな人なのかすぐに把握できるようになります。これこそが今後のオムニチャネルの形です。
WebRTC を使えば、高額であった PBX や 電話機、電話回線が不要になるので、大規模コールセンターのみで実現可能であったコールセンターの仕組みを小規模事業者でも扱えるようになります。ECサイトやベンチャー企業など、あらゆる問い合わせ窓口がシステム化され、効率的な電話対応が実現できるようになるでしょう。
また、今までのコールセンターはOS依存のものばかりでした。Windowsでしか対応していません。となると Linux や Mac を使っている方はサポートできません。Mac ユーザーが増えてきた今となっては大きな問題です。 WebRTC はブラウザで動きますので、この課題も解決できます。
日本での WebRTC 対応状況
新たらな可能性を秘めた WebRTC ですが、日本での対応状況はどのようになっているのでしょうか。現状では2つのパターンが見受けられます。
1つは海外の WebRTC プロダクトを日本に輸入したパターン。言語が日本語に翻訳されただけで、使い勝手は海外用の機能になっています。
そしてもう1つは日本で WebRTC を使って構築したソリューションです。まだ数は少ないですが、Twilio や Tropo などの海外のWebRTCテクノロジーをベースに作られたサービスが登場し始めています。
まだまだ発展途上の WebRTC を使ったコールセンターソリューション。今後の動向に注目です。
WebRTC の課題
さて、WebRTC は既存のPBXなどを立てるコールセンターより完全に優れたものなのでしょうか。ここで両者を比較してみます。
WebRTC の基本は IP電話 です。つまりインターネット回線を用いて電話をします。このインターネット電話は「ベストエフォート型」と呼ばれており、そのネットワーク環境において最大限努力した結果の通話品質となります。つまり、ネットワーク環境によっては音質が劣化し、聞き取りにくくなる可能性があります。あまりに酷い場合は顕著になりますが、近年の通信の高速化により、この課題は解決しつつあります。
そしてセキュリティの問題があります。通常のインターネットセキュリティと同様、WebRTC を用いた通信でも同様のセキュリティ対策が必要となります。WebRTC を利用するコールセンターを提供する事業者のセキュリティ意識はもちろん、実際に利用する側の意識も高める必要があります。
大規模トラフィックにおける制御も気になる点です。大量のコールを受け付けて電話をするコールセンターを運営するとなると、電話通信費用は既存のPBXなどを建てたコールセンターの方が安定した回線が得られます。それと同時に専用のPBXを持った方が大規模コールセンターの場合は料金が安くなるケースがあります。
逆に言うとこれらの課題を解決した WebRTC コールセンターが登場すれば、より良いカスタマーサービスが実現できます。
WebRTC コールセンターの一例
WebRTC を利用した新しいコールセンターサービスの一つに CallConnectがあります。
CallConnect は "5分でコールセンターを構築できる"サービスです。電話の課題を抱えていたけども高額、複雑で手が出しにくかった小規模・中規模事業者様でも簡単に本格的なコールセンターを実現することが可能です。WebRTC による オムニチャネル対応を強化しており、より良いカスタマーサービスを手助けします。
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