本記事では、売上や企業への信頼感にも大きな影響を与えるカスタマーサービスについての考察や、あらゆるリソースが限られたスタートアップがどのようにカスタマーサービスに力を入れたら良いのか?ということを私たちの経験から書きました。
カスタマーサービスの充実が利益を増加させる。
カスタマーサービスとは、顧客に対する情報提供やサービスを行うこと、また顧客の相談に対応する業務やその担当者を指します。 購入した商品に関する質問や購入前の相談など、顧客ごとに提供しなければいけないサービスは異なってきます。
AmazonやZapposなど多くの有名企業では、カスタマーサービスに力を入れており、良い顧客体験を提供することが売上や良い口コミにつながることを知っています。
実際に、カスタマーサービスの向上と効率化が利益の増加につながることが実証されています。*1 私たちの会社でも、カスタマーサービスの重要性を認識した上でどのように取り組んでいけばよいかということをよく議論します。
しかし、あいにく私たちはAmazonやZapposのように潤沢なリソースを持ち合わせていません。 カスタマーサービスの重要性を理解し、カスタマーサービスに力を入れたいと思うものの、サポート専任のスタッフを何人も雇えるわけではなく、大掛かりなシステムを導入できるわけでもありません。
では、私たちはどうしたら良いのでしょうか?
カスタマーサービスを充実させる3つのアイデア
私たちがカスタマーサービスを充実させるために意識していることを3つご紹介します。
1.とにかく早く対応する
当たり前のことかもしれませんが、チャネルが何であれ、とにかく早く返答するということです。そして、1分1秒でも早く顧客の抱える課題を解決することを意識します。 Zendesk社の調査によれば、顧客満足度は初回の回答が遅い場合に低下し、速ければ上昇するという結果も出ています。
こちらに関しては、私たちのようなスタートアップでも、日々の社内における意識共有や独自のルールを作ることによって、大きなコストをかけることなく、実践できるでしょう。
2.クラウドツールを導入する
今の時代、高額なシステム導入費をかけなくても、低価格で便利なツールが導入できます。 人的リソースなどが限られている私たちの会社でも、Zendeskなどのクラウドツールを積極的に活用することで、社内における情報共有スピードを早めたり、対応状況をしっかりと把握できるようにしています。
また、今後私たちも気をつけていきたいのが、顧客はあらゆるチャネルからコンタクトしてくるため、それぞれのツールをシームレスにつなげられるかどうかという点です。
顧客からしてみると、チャネルを変えるたびにまた同じ情報を伝え直さなければならないのは非常に面倒なため、ツールを選定する際には、各ツールがどの程度他のツールと連携できるかに気を配りたいところです。
3.サポートチャネルとして“電話”を積極的に使う
日本アバイア社が行った調査によると、最も活用されている企業への問い合わせ手段は、電話が76%となっており、顧客が好む問い合わせ手段も電話が55%となっています。また、Zendesk社が行った調査によると、チャネル別満足度も“電話”が一番高い91%で、チャットは85%、メールは82%となっています。
こうした調査からもわかるように、依然として多くの顧客が問い合わせ方法として“電話”を好み、“電話”によるコミュニケーションによって高い満足度を得ています。
そこで、私たちの会社では“電話”というチャネルを有効活用することを意識しています。
私たちは、導入コストが高いビジネスフォンは利用せず、自社開発のクラウド電話サービス「CallConnect」を活用し、GoogleChromeなどのブラウザ上で電話の受発信を行っています。
また、「個人情報を毎回伝えなくてはならない」「同一案件での問い合わせの場合、電話担当者が変わるたびに内容を伝え直さなくてはならない」といった顧客が面倒に感じるであろうことが起こらないように、通話内容を「CallConnect」で録音し、履歴を顧客ごとに管理することで、スムーズな状況把握、電話対応ができるように努めています。
「ビジネスフォン」からCallConnectを活用した「ブラウザフォン」へ
これまで企業における“電話”は、ビジネスフォンが主流でした。 しかし、ビジネスフォンの導入には一台数万円から高いものであれば10万円程度の費用がかかり、回線工事などでも別途費用が発生します。 また、急な人員増加やオフィス移転の時には、煩雑な手続きもその都度必要です。
これらのコストは、“電話”というチャネルを活用して、カスタマーサービスに力を入れたいと考える私たちにとっては、とても大きな負担でした。
だから、私たちはブラウザを電話機代わりに利用し、外線の受発信はもちろん、カスタマーサービスの充実を図る上で重要な対応履歴の管理やZendesk、Slackなどといった外部サービスとの連携ができる「CallConnect」を作りました。
これまでの“電話対応”といえば、受話器を上げて、話して、手書きでメモを取る、そして社内の情報共有ツールに投稿したり、顧客管理ツールに入力し直すことでした。
しかし、ネットと電話をつなぐ「CallConnect」では、簡単なクリック操作などで完結するため、私たちにとっては、これが“電話対応”という認識になっています。CallConnectにログインしていれば、 メンバーが東京ではなく、別拠点にいたとしても、同じオフィスにいるかのように電話対応ができますし、内線で電話をスムーズに取り次ぐこともできます。
私たちの会社では、電話というチャネルを使ったカスタマーサービスを「ブラウザフォン」によって日々実践しています。
小さなチームでもカスタマーサービスは向上させられる。
小さなチームでも、日々の何気ない心がけやブラウザフォンを活用することで、“電話”によるカスタマーサービスはもちろん、他のチャネルにおけるカスタマーサービスも向上させることができるでしょう。 しかし、電話対応に関して言えば、「ビジネスフォンなどの電話機器で受話器を上げて行うものだ」というこれまでの認識は変えていかなければなりません。
また、私たちのようなスタートアップがツールを導入する際には、導入するまでにかかる時間的コストや購入費用を最小限にするという視点も当然大切にしなくてはなりません。
カスタマーサービスを向上させるために、より良いツールを探したり、日々試行錯誤することには手間がかかるでしょう。
しかし、そうやって「顧客にもっと喜んでもらいたい、満足してもらいたい」と日々試行錯誤しながら取り組むことが、長く愛されるサービスや企業になっていくためには必要なことだと私は信じています。
*1:※1「The Effect of Customer Service and Content Management on Online Retail Sales Performance: The Mediating Role of Customer Satisfaction(カスタマーサービスとコンテンツ管理がオンライン小売業の 販売実績に与える影響)」 Ayanso, A., K. Lertwachara, and N. Thongpapanl (2011), AIS Transactions on Human-Computer Interaction (3) 3, pp. 156-169