カスタマーサクセスのゴールは「顧客に成功してもらうこと」だと一般的に言われますが、それだけでロイヤルカスタマーを生み出すことはできるのでしょうか。本記事では、優良顧客をロイヤルカスタマーに転換させるためのカスタマーサクセス手法についてご紹介します。
成功を "提供し続ける" ことに意識を向ける
サービスを提供する上では、まずはターゲットとなる市場を設定し、ターゲットが抱えるどんな課題をそのサービスで解決するのかを考えることでしょう。これは、サービス提供における市場理解に役立ちますが、顧客に対して長期間価値を提供し続けるという点を見落としています。
例えば、「採用支援のサービス」を提供しているとします。仮に顧客がそのサービスで人材採用ができても、採用した人材がすぐに退職してしまうような場合、顧客は長い期間そのサービスを使い続ける決断をしないでしょう。顧客に長い期間サービスを使ってもらうには、単に採用ができるというだけでは不十分で、採用した従業員が長く働き続けられる環境を作るためのサービスもその企業が提供できると良いでしょう。 顧客がそのサービスを使って最終的に何を目指しているのか、その点について深く考える必要があります。なおここで大事なのは、「それぞれの顧客で求めるゴールが違う」という点です。
業界や企業規模ごとのベストプラクティスを模索する
業界や企業規模によって、求めるゴールが違ってきます。そこでカスタマーサクセスの第一歩として、以下の手順で顧客のゴールを分類することから始めましょう。
0. 全社員がカスタマーサクセスを理解する
まずカスタマーサクセスを実施する上で重要なのが、全社員がカスタマーサクセスに関わるという点です。顧客を成功に導くには、実際に顧客とやりとりするタッチポイント全て(営業、マーケティング、技術、サポートetc) で同じ意識を持つ必要があります。 その顧客にとっての成功は何なのかが各部署で把握しきれていないと、誤った方針で顧客を導いてしまうことになりかねません。 カスタマーサクセスという部署を築いただけで満足してしまってはいけません。
1. 現状の理想顧客の洗い出し
既に顧客を抱えている場合、その顧客の中で最もサービスを使いこなしている5社を選定しましょう。長く使い続けているだけでなく、頻繁にサービスにログインしていたり、効果的に活用している企業を選びます。 できればその5社は異なる業界で、使い方や目的は異なることが望ましいです。
2. 各社の利用用途と今後の期待を把握
その5社がどのようなビジネスを運営し、サービスをどのように活用している(活用しきれてない) のかを分析しましょう。そして、その顧客が今後サービスに何を期待しているのかを把握します。今後も使い続けてくれる顧客の期待を理解するには、直接話すのが最も正確に把握する手段となります。 ロイヤルカスタマーが理解している本当の価値は、例えばコスト削減、生産性の向上、収益の増加、マーケット認知拡大などが挙げられます。
以下のような質問を検討してください。
- 私たちは、顧客が今日どんな風に製品を利用しているかを理解していますか?
- 顧客がプロダクトを採用した理由や解決したかった課題は何なのかを理解していますか?
- 顧客の行動パターンを観察しましたか。
- そのサービスを使うことの課題や難しさは何なのかを顧客に尋ねましたか?
- 何がサービスを使うのを難しくさせていますか?
- どうやったらサービスを通して顧客の課題をもっと効果的に解決できるかを理解していますか?
3. 顧客へのアプローチの標準化
理想とする顧客の製品利用方法や期待を理解したら、それを標準化することにチャレンジしましょう。 新しくトライアルを始めた企業が、理想とする顧客像のうちどれに該当するのかを把握して、その理想顧客になるためのギャップを理解します。 そのギャップを埋めるように支援を続けることが重要になります。この手順は、「なぜ理想顧客は成功して、他の顧客はそうならないのか?」を理解することにも役立ちます。
アプローチの標準化にあたり、ゴールを具体的な数値まで落とし込むことが重要になります。
例えば以下のようなゴールを設定してみましょう。
- 金融: 処理の自動化やレポートの可視化によって10%のコスト削減を目指す。
- メーカー: 自動化やリアルタイムレポートによって製品Xの制作のコストを5%削減する。
また、業界毎のゴールや顧客個々のゴールを設定するのに以下のような数値を参考にしてみてください。
獲得率、初期のライセンス比率、有益な顧客獲得率、サービスの更新率、SLA、リードの拡大率、サービスライセンス比率、顧客満足度、新サービスの利用率、エンタープライズアカウントの割合、ヘルプセンターへのトラフィック、NPSスコア、アップグレード率、利用率、適用率、エンゲージメント、NPS、顧客成長率、収益率、顧客価値の合計
終わりに
顧客それぞれの成功を定義して、その成功を目に見えるようにしましょう。そうすることで、顧客は製品の価値を正しく理解し、長期的に使い続けてくれます。
ロイヤルカスタマーを増やし続けることで、長く愛され続けるサービスを運営することができます。ぜひ今日からできるカスタマーサクセスは何かを検討してみてください。
最後に、本記事の内容は以下の本を参考にさせていただきました。現在は英語本しかありませんが、より詳細を知りたい場合にはぜひ読んでみてください。
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