昨年の 2016 年はチャットボットの年と言われ、チャットボットの市場は大きく成長しています。カスタマーサポートはチャットボットの登場でどのように変わってゆくのでしょうか。本記事は、カスタマーサポート勉強会のイベントレポートです。
チャットボットのおさらい
改めて、チャットボットの特徴をおさらいしましょう。チャットボットは私たちが Facebook メッセンジャーや LINE で日常的にチャットをしている相手になってくれます。私たちからチャットボットに話しかけることもできますし、チャットボットから情報を教えてくれることもあります。
チャットボットは、馴染みの深いチャット上の空間で会話が展開されるため、今までのWebサービスのような複雑さは一切ありません。複雑だったインターネットショッピングの手続きも、ボットとの会話を通じて最適な商品を選んで購入してくれたり、ニュースを探す前から関心のありそうなニュースをボットが届けてくれるようになります。今までは検索した商品が見つからなかった場合に、それで諦めてしまう場合が多くありました。チャットボットは会話を通じて顧客の趣味格好を深く聞き出すことができるため、より最適な商品を購入いただく可能性を高めることも期待されています。
サポートコストの削減も見逃せません。FAQ にあるようなよくある質問に対しては、チャットボットが自動で答えを探し出し、回答してくれるようになります。サポート担当者はチャットボットでは解決が困難な事象だけに集中すれば良いことになります。
チャットボットの現在
現在でも、あらゆる領域でチャットボット化が進んでいます。その最も有名な事例の一つに、ヤマト運輸のチャットボットがあります。再配達等のやり取りの中で、LINE を通じてボットが再配達の希望日時などを聞いて処理をしてくれます。
このような、型番や日時などで決まったサポート内容をチャットボットだけで解決できるような事例から導入が進んでいます。
また、会話を純粋に楽しむボットも登場してきました。"りんな" と呼ばれるチャットボットは、まるで日常会話をしているかのような形でボットと会話を楽しむことができます。思いもよらぬ発言が逆に面白いと SNS で話題になることもしばしばです。
チャットボットの未来
さらにチャットボットの活用が進んだ先に何が待っているのでしょうか?そこでキーワードとなるのが、人工知能とユニバーサルボットです。
人工知能が発達すれば、今までのチャットの文脈や顧客の属性に応じて、最適なメッセージを生成することが可能になります。私たちは相手がボットなのか人なのかすら判断できなくなることでしょう。そうなると、基本的なサポートは全て人間が行う必要のないほどに高性能になるかもしれません。
一般的にサポートのタイプとして、人間らしさが必要な場合とそうでない場合があります。例えば"パスワードを忘れた"といった 問い合わせに人が介在する必要は特にありません。顧客は単にパスワードを再生成してログインしたいだけだからです。それとは別に、今後のシステム導入を検討するための問い合わせの場合、チャットボットと会話をするようでは実際に導入まで踏み切ることは難しいでしょう。そこは人がしっかりと真摯に説明することで、最後の決め手となることも多くあります。
また、見逃してはならないのはユニバーサルボットの登場です。 スマートフォンに内蔵された Siri や、 Amazon が発売した Amazon Echo といった会話ベースのアプリやデバイスは、チャットボットの文字か音声かだけの違いであり、対応する先は「ボット」です。ユニバーサルボットが、あらゆるほかのボットと連動することで、伝えたことのバリエーションをより多く実行できるコンシェルジュのような存在となることでしょう。例えば “電気をつけて” と命令すれば、IoT の電化製品が連動して動いたり、"渋谷駅までの行き方を教えて"と伝えれば、そこまでの行き方や到着時刻までも教えてくれるようになることでしょう。
Google 検索で私たちはテキストで検索をしてきましたが、これからは会話によって何でも実行されるようになる日が着々と近づいています。
カスタマーサポートはどう変わるか
チャットボットの未来をご紹介したところで、改めてカスタマーサポートの未来について考察します。
まず、サービスに対する専門知識を要するようなサポート内容を チャットボットや人工知能で置き換えるにはまだまだ時間がかかります。そのため、高度なサポートはこれからも確実に需要が見込めます。
最近ではサポート担当者は”顧客に一番近い立場にいる”社員として、デザインや開発、ビジネスの現場まで活動の幅を広げている人もいます。このような働き方がサポート担当者として一般的になっていけば、逆にこれからはますますカスタマーサポートの立ち位置は重要なものとなることでしょう。
変わらないことを強調しつつも、単純な質問の回答などの作業は間違いなくこれから自動化が進んでいくことでしょう。一般的にアルバイトや外注先を使ってサポート窓口を開設するような形態は必要なくなっていくと考えられます。
また、人工知能をチューニングするような専門のエンジニアが会社に一人は必要になってくるかもしれません。それぞれのプロダクトに最適な人工知能にしていくよう"育てて"いく必要があるためです。人工知能が単純な人の仕事を奪っていく中で、このような専門知識を有した人材の需要はますます増えていくことでしょう。
終わりに
本記事ではチャットボットと人工知能に焦点を当てて、未来について考察しました。
サポート担当者であっても、チャットボットのアプリやサービスなど、日頃から触れてみることで未来について考える良いきっかけになることもあります。ぜひこうしたトレンドに注目してみてください。