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人工知能やチャットボットはカスタマーサポートの仕事を奪うのか?

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多くの業界に変化を与えると言われている人工知能やチャットボット。特にカスタマーサポート業界は先に挙げられる技術の活用分野です。本記事では、人工知能やチャットボットがカスタマーサポート業界にどのような影響を与えるのかを考察します。

人工知能の未来と現実

最近話題になっている人工知能の裏側には、機械学習と呼ばれる分野の発展があります。機械学習の分野で登場した “ディープラーニング” という仕組みによって、コンピュータが"学習" していくことが可能になりました。最近では、囲碁のプログラムが人間に勝利を収めたニュースやGoogle 翻訳の精度が飛躍的に向上したニュースが私たちの耳に入ってきています。

ディープラーニングは基本的には大量のデータを機械に学習させることで精度を上げていこうというアプローチになります。人間と同じように機械も学んでいかなければなりません。それは詰まる所、学ぶための大量のデータが必要になることを意味します。

この話を踏まえた上で、カスタマーサポートの分野に目を向けて見ましょう。カスタマーサポートの現場では、日々変わりゆく商品やプロダクトを理解し、それに合わせて顧客からの質問に答える必要があります。機械学習ではそのサービスに特化した大量のデータを用意し、学ばせる必要があります。当然、ほとんどのサービスではそのような大量のデータを持つことはないでしょう。この点が現時点でディープラーニングをカスタマーサポートの現場に応用させることを難しくしています。

反対に、人間が対応すれば最低限の情報を理解するだけで済みます。サポート担当者は、顧客にとって最適な回答を導き出すために十分な知識と経験を持っているためです。現時点では、人間がサポートした方が確実と言えます。

それにもかかわらず、今なぜ人工知能やチャットボットが注目されているのでしょうか?

人とボットの共存

人の仕事を全てボットに託すことはできなくても、人の仕事の一部分をサポートするような関係として人工知能やチャットボットの活用が注目されています。

例えば、顧客の問い合わせが頻繁に寄せらせる内容(よくある質問)だったとします。その場合、あらかじめ用意された答えを提示するだけで済み、サポート担当者がわざわざ介入しなくても解決できる見込みがあります。サイトに埋め込まれた"チャット"ウィジェット でやり取りをする場合、顧客はボットと会話をしているという認識すら持たないかもしれません。

私たちサポート担当者は、チャットボットでは扱いきれない複雑な問い合わせに対応することになります。つまり、 人工知能やチャットボットはサポートの仕事をなくすのではなく、本来サポートすべき人に対してよりフォーカスを当てられるようにするためのものである と言えるのではないでしょうか。

この点に関して、今多くの企業がサポート担当者をサポートするための人工知能/チャットボット の導入を進めています。先進的な取り組みとして、 LINE Bot を活用してチャットのサポートを半自動化した事例などが紹介されるようになってきています。

人工知能やチャットボットはサポートの仕事を奪うのか

遠い未来をベースにして考えれば、サポート自体の仕事は専門知識を持った少人数だけで運用できるようになることでしょう。会話の文脈を理解させ、機械学習によって正確な回答を導き出すことができるようになれば、基本的な質問に関してはもはや人間が介入する必要は無くなってきます。カスタマーサポートの仕事には、より高度な知識や柔軟性が求められることになるでしょう。

究極的にはサポートの仕事は全て無くなるのでしょうか。もしかしたら、そんな未来がくるのかもしれません。

しかし、だからこそ人間味のあるサポートに対して顧客はより高いロイヤリティを持つ時代になっていくことでしょう。あえて会いにいったり、あえて電話で直接人の声を聞いたり。そんなサポートを愚直にできる企業は日本の老舗企業のように、愛され続ける企業になるのではないかと考えています。

仮に、全てをチャットボットで運用し、人のコストをゼロにしたとしても、今度はそのボットの運用をするためのコストが発生します。例えば、最適な答えをボットが導き出すようにボットを調整する担当者であったり、最新情報をボットに反映させるような管理者が必要になることでしょう。つまり、どんなにサポートの仕事を失くそうとしても、次なる新しい仕事が出てくるのです。こう考えれば、時代の流れにうまく乗りながらも、自社で最も大切にしたいことを決めて行動すれば、未来の技術に対して恐れる必要はないと筆者は考えています。

終わりに

人工知能やチャットボットについての傾向と筆者の所感をまとめました。後半はあくまでも個人的な意見ですので、人それぞれ感じるものは違うことでしょう。

チャットボットをテーマに、第12回サポート勉強会で発表する予定です。もしこのトピックに興味のある方がいれば、そこで良い議論ができればと考えています。