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顧客がサービスを選ぶ本当の理由

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顧客は広告や値段、機能の多さでサービスを選ぶのでしょうか。顧客がサービスを選ぶ本当の理由について考察します。本記事は、第11回サポート勉強会の内容を記事化したものです。

コストダウンの悲劇

一般的に、"安ければ安いほどモノは売れる" と思われがちです。しかし、そのコストダウンによって「リコール製品の回収」「異物混入事件」「企業のデータ流出」などの不祥事ニュースが後を絶ちません。これらの事件は、"サービスの中で手を抜いてはいけないところ"で手を抜いてしまったのが原因だと言えるでしょう。今までコツコツと築き上げてきた大切な顧客との信頼もいとも簡単に崩れさります。

“とにかく赤字を黒字化しろ” と上司から言われた部下は、やりたくもないこと、場合によっては顧客を裏切る行為をしなければならなくなってしまいます。カスタマーサポートでも同じです。顧客とのやりとりの窓口という大切な仕事を削減することで、もっとも大切にしなければならない顧客をないがしろにしてしまうのです。今まではすぐに電話に出てくれた/メールを返してくれたのに、今回は何日も待たされた。そんな体験をしてしまえば、顧客はサービスへの愛着をなくし、他のサービスへと移っていくことでしょう。

企業において特に大切な「人材育成」を怠ってはなりません。企業の想いを反映した社員を育てていかなければ、企業の望む未来を実現することはできません。人材育成を怠ると、前述の不祥事を起こしたり、サービスの品質悪化を招きます。

不祥事を起こせば、既存顧客は継続してそのサービスを使いたいとは思わないでしょう。それだけでなく、近い将来顧客になってくれたはずの見込み顧客も他へと移っていってしまいます。その結果、社員の働く意欲は失われ、魅力的な製品を作ることも難しくなってしまうのです。これこそが、コストダウンをしたことによる連鎖的な悲劇です。

本来は「知恵」や「技術力」によってコストダウンを達成し、"安くて良いものを提供する" という一見矛盾したようなことを実現しなければならないのです。企業努力こそが顧客の信頼を勝ち取る方法とも言えます。

分業化戦略は正しいのか

今の時代、それぞれの専門知識を伸ばそうと積極的な分業化を行なっている企業が多くあります。サービスで言えば、エンジニアはエンジニア、デザイナーはデザイナー、サポートはサポート といったような具合です。

しかし、実際にサービスを使う顧客はそのような分業化を望んでいるのでしょうか。
例えば、ちょっと使いづらい機能があれば顧客はサポートに問い合わせるでしょう。ここでサポート担当者が一次回答できずにエンジニアに話を振ることはよくあります。ただ、このような体制では顧客の求める迅速なサポートは実現できません。
そこで、サポートをエンジニア自らが行うような体制にしてみてはいかがでしょうか。エンジニアにとっても直接ユーザーの生の声を聞くというのは、上司に何か言われるより貴重なフィードバックになることもあります。また、人から聞いたことを伝言するような方法では実現できない、その人ならではの想いを顧客に伝えることができるかもしれません。

最近は企画段階からエンジニアも参加するという企業が増えていきているようです。これはこれで良いことですが、サポートも全員ができるような体制から考え直すべきです。新規顧客獲得より、今使っていただいている既存顧客の方が大切。そのような想いを全員が持つことで初めて一貫性のあるサービスを実現できるのです。

顧客感動を生む施策

実際に顧客感動を生む企業の例を挙げます。顧客満足度の高い企業が行なっていることは参考になる部分が多いはずです。

某航空会社の事例

某国内航空会社。ここではある顧客が「ベビーカーを最初に降ろしてほしい。赤ちゃんをおんぶし続けるのは辛い」という要望が来たそうです。社員が膨大にいる企業で、このフローを定型化するには、多くの承認が必要です。

サポート担当者 → サポートマネージャー → 戦略管理室 → カウンター → 各部門への意見調整 → 会社の対応策を経営レベルで反映 → 社員に浸透

果てしない流れを経て、ようやくベビーカーを最初に降ろすフローが実現できます。 カスタマーサポートの意見を全社的に重要視し、業務を柔軟に変えていける会社の風土を作ることが大事であると改めて教えてくれます。

固定客を生む美容院

顧客は本当に髪の毛を切ってもらうだけで満足するのでしょうか。そのことに疑問を持ち、信念を持って経営する美容院があります。その美容院は常に予約でいっぱいで、遠方からも固定客がわざわざ足を運んでくるそうです。

一般的な大きめの美容院では、髪の毛を洗う担当、髪の毛を切る担当、ドライヤーで乾かす担当、会計をする担当 といったように全て分業化を行なっています。しかし、その美容院は違います。出迎えから会計が終わるまで、全ての工程を一人の担当者が行うそうです。顧客としては、「あの美容院に行こう」ではなく「あの人に切ってもらいに行こう」という“人ベース”の考え方に切り替わります。途中で会話の話題が尽きることもありませんし、違う担当者で毎回同じような話をする必要も無くなります。人はそのような自分専任がいるということに対し、大きな満足感を得ることができるのです。

顧客はただ髪の毛を切ってもらうという行為だけでなく、満足感や幸せ、おもてなしの心を受けることによって、"またあの店に行きたい" と思うようになるのです。

当然ですが分業化しなければ手間はかかります。しかし、その手間を顧客のために喜んでやるかやらないかの違いで、お店の未来は決まっていきます。ちょっとした手間でも顧客のために尽くすという気持ちを全社的に持ち続けられるかが生き残りのカギとなることでしょう。

おわりに

2/23に開催したサポート勉強会では、以下の書籍を参考に発表しました。本書では、実にたくさんの事例を踏まえた上で、顧客満足の本質に迫っています。顧客感動を生む事例を知りたい、より具体的な顧客へのサービスを知りたいという方は是非読んでみてください。

なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか?

なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか?

サポート担当者だけでなく、経営者も顧客満足について真剣に考えられるような社会になってほしいと思います。

サポート勉強会は定期的に開催しております。もし興味があれば気軽に参加してみましょう。

customersupport.connpass.com