コールセンターでは多くの指標を元に、日々品質改善がなされています。本記事では、第10回サポート勉強会で発表した電話サポートの指標についてのレポートをまとめます。
指標の必要性について
サポート担当者は日頃から電話やメールなどであらゆる問い合わせに対応しています。そんな日々が続くうちに、「なんとなく毎日業務をこなしているけど、サポートの質が良くなっていっているのかがわからない」という思いを抱くようになります。サポート体制を正しく"改善" していくためには、何かしらの数値を追うことが欠かせません。なぜなら、それによってサポートの質が確実に良くなっていっているという実感を得ることができるからです。これは、現場で働くサポート担当者の大きなモチベーションになります。
また、指標はサポート担当者だけに重要なのではありません。サポート部門のマネージャー、そしてさらにその上のビジネスを回していく経営者にとっても、非常に重要なのです。なぜなら、指標を追うことによって現場のサポート担当者がどのように働いているのかということを把握できるからです。「サポートの質は良くなっています」という報告と、「前月に比べ〜は、15% 上昇しました」という報告では、具体的な数字が示された後者の方が理解しやすいものとなります。
正しい指標を設定しましょう
設定した指標が誤っていると、間違った方向に努力してしまいます。 例えば、「通話時間は少なければ少ないほどいい」という考えで、通話時間の指標だけを追っていたとします。その指標を追えば、確かに通話時間を短くすることはできるでしょう。しかし、本来は丁寧に説明しなければならないような場合でも通話時間を短くすることばかりに気を取られ、全て手短に済ませてしまうようになるかもしれません。これでは、「電話サポートの質」が犠牲になり、結果的に顧客に不満を抱かせてしまうでしょう。
正しい指標は、「達成すべき成果が明確になっていること」「指標が妥当であること」「測定が信頼できるものであること」の条件を満たしてなければなりません。達成すべき成果が明確でないと、先ほどの例のように誤った指標を追い続けて意味のない改善を繰り返してしまいます。指標が妥当でなかったり、測定が信頼できないものだと、正しい改善の成果を見ることができません。3つの条件をしっかりと満たす指標を、目の前の目標だけではなく、経営理念レベルで考えて設定することが必要です。
一般的なコールセンターにおける指標
正しい指標とは何かを踏まえた上で、一般的なコールセンターではどんな指標があるのでしょうか。よく挙げられるものは以下の通りです。
繋がりやすさの指標
- サービスレベル (顧客が電話をかけてから何秒以内に何件の通話を受け取れたか)
- 応答率
- 平均応答速度
- 最長待ち時間
- 営業時間外着信数
対応力、正確さの指標
- 平均通話時間
- 保留率
- 取次率
これらは対応内容に関係なく、純粋に電話を受けるという行動に焦点を当てた指標となります。顧客がコールセンターで不満に思うこととして多く挙げられるのは、「電話をかけても相手に繋がらない」という点です。そのため、電話を多く受けるコールセンターでは“サービスレベル”を指標として追うことがよくあります。 しかし、こうした指標は電話をたくさん受ける場合には有効な指標となりますが、そうでない場合にはあまり意味をなしません。
自社の電話サポートにおいて最も大切なことは何か。改めてこの点について考え、追う指標を慎重に選ぶ必要がありそうです。
愛される企業を増やす
弊社の企業理念は、「愛される企業を増やす」です。愛される企業を増やすためにどんな指標を追うべきか、この観点から私なりに考察をし、勉強会において発表しました。その中で意識したのは、一般的なコールセンターで用いられる指標ばかりを追っても、私たちが目指すものは実現できないという点です。電話に早く出たというだけで、それが顧客に満足してもらえるサポートになっているかどうかはわからないのです。
そこで最近登場してきた「NPS®(Net Promoter Score)*1」は私の考えと似た指標でした。NPS®とは、「あなたはこの製品・サービスを友人や知人に薦めたいですか?」という質問に対して顧客が1~10の数値で答えるというものです。この数値を高めていくことを重要視すれば、素晴らしいサポートを目指し続けることができます。そして、サポートの根幹ともいえる顧客満足を実現できるのではないかと考えました。
NPS®の測定方法で一般的に普及しているのは、対象顧客にメールを送って簡単なアンケートに答えてもらう方法です。これは運営側にとって手軽で、顧客にあまり迷惑をかけない方法です。 その他の測定方法としては、例えば通話が終わった後に顧客へ「今回のサポートの評価を1~5 でお答えください」といった録音音声を流して回答してもらう方法もあります。ただ、電話を切るたびに毎回このようなガイダンスが流れるのは迷惑になる可能性もあるため、うまく調整する必要があるでしょう。
おわりに
本記事では、先日行われた第10回サポート勉強会の中の「電話サポートにおいて追うべき指標は何か?」の発表内容をお届けしました。 本記事をきっかけに、現在追っている指標が適切かどうかを今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
今後も定期的に勉強会を開催し、その発表内容を本メディアにて共有してまいりたいと思います。
*1:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。