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顧客の評価が決まる真実の瞬間

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情報や技術の革新に伴い、一昔前までは誰もが憧れるような企業だった会社が一転し、経営難になることもある今の時代。テレビをつければJAL、シャープ、東芝といった日本を支えてきた大企業の経営危機が連日のように報じられています。

30年以上前になりますが、北欧の航空会社、スカンジナビア航空は同様に経営難に陥っていました。しかし、最年少で経営を引き継いだ伝説の経営者ヤン・カールソンがわずか1年で黒字に回復させたのです。その施策はコスト削減や賃料の値下げといったよくあるものではなく、従業員に誇りを与え、顧客へのサービスも高めるといったすばらしい施策でした。本記事では、再建のためにカールソンが行った施策がどのようなものだったのか?をご紹介します。

当時の航空会社の状況

30年以上前は現在のような格安航空もなく、民間と言えども多くの航空会社では各国の政府の支援を受けながら運営されている形態が一般的でした。そして、その支援を当てにして大きな赤字を垂れ流しながら運営されている航空会社も少なくなかったのです。スカンジナビア航空もデンマーク、ノルウェー、スウェーデン政府の支援の元で運営されていました。多くの航空会社では国や経営者にとって「航空機」という高価な資産を利用して、運行、営業する装置産業といった認識の上で運営されていました。経営幹部の職務は、投資や管理、運営に限られ、サービスは企業機構の末端の従業員が担当する分野で、副次的業務だったのです。

しかしながら、顧客にとって重要なのは「航空機」ではなく、予約の手続きから搭乗前の過ごし方、キャビンアテンダントの対応、航空機の快適さ、それらすべてを含めた体験だったのです。

ピラミッド型の構造を排除

カールソンは、顧客のニーズに迅速に応えることを優先し、ピラミッド型の体制を排除しました。また、顧客と最前線で接する従業員に権利と自由を与えました。サービスそのものと、サービスを担当する従業員が成功につながる大きな要因と考えていたためです。現場は上からおりてきた指示をこなすロボットのような存在ではなく、最前線で顧客にとってどのような対応をしたら良いか考え、実践する創造的なものへと変わっていきました。また、役員専用食堂の廃止など、周囲に模範を示し、トップが本気であるとのメッセージを従業員に伝えることも怠りませんでした。

真実の15秒で評価が決まる

スカンジナビア航空は年間1,000万人の利用者がいて、平均すると5人の同社の社員に15秒ずつ接することが調査から分かっていました。この15秒の体験を感動体験とするために、スカンジナビア航空はあらゆる手を尽くしました。航空機の座席に座っているフライトの時間も消費体験ではありますが、サービス業にとって、属人的な接点こそが顧客に忘れがたい体験を提供できる絶好のチャンスと捉えていたのです。

顧客を中心にサービスを提供する企業に生まれ変わったスカンジナビア航空は、「頻繁に飛行機を利用するビジネス旅行者にとって世界最高の航空会社にする」という明確なビジョンを掲げ、1年で147項目もの顧客視点に立ったサービス改善を実施しました。その施策が功を奏し、他の航空会社が赤字で苦しむ中、たった1年で黒字化しました。 翌年には『フォーチュン誌』が「ビジネス旅行者にとって世界最高の航空会社」と格付けし、翌々年には『エア・トランスポート・ワールド誌』から「年間最優秀航空会社」の名誉を授けられたのです。

まとめ

スカンジナビア航空の話は30年以上前のものではありますが、カールソンが行った数々の施策は現在でも航空会社や経営者の間で語り継がれています。筆者も先日、格安航空を使って九州→東京間を移動しました。格安航空ながらも、アテンダントを始めとしたスタッフの対応時の表情や動作は素晴らしく、徹底されているのを感じました。顧客接点を重視することの大切さを示した同社の話は今読んでも非常に参考になるため、詳しく知りたい方は下記のような書籍を読んでみるのも良いのではないでしょうか。

真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか

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